ドイツの工業力が生んだ「狂気」の自動車デザイン ゲルマン魂が光る奇妙なクルマ 30選 後編
フォルクスワーゲン・フューチュラ(1989年)
フォルクスワーゲンの主力EV、ID.3が登場してからしばらく経つが、そのスタイリングは80年代後半のミニバンコンセプト、フューチュラ(Futura)に由来していると考えられている。具体的に誰がフューチュラをデザインしたのかは定かではないが、設計者が未来のビジョンを持っていたことは明らかで、それがこの名前の由来となっている。 IRVW(統合研究)部門に属し、EVのような外見とは裏腹に、最高出力82psの1.7Lガソリンエンジンを搭載している。四輪操舵システムとガルウィングドアを備えているが、残念ながらID.3には採用されなかった。
BMW E1(1991年)
サイズは現代のフィアット500とほぼ同じだが、フォルムとスタイリングはアウディA2に近い。BMWは1972年からEVゲームに参加しており、E1は250kmの航続距離を武器に1990年代初頭の競争相手を蹴散らしたかもしれない。同車をデザインしたのはマーク・D・クラーク。以前はBMW Z1の開発に携わり、最終的にはポルシェに移ってアシスタント・チーフ・デザイナーとしてカレラGTや987ケイマンのスタイリングに意見を述べた。 最初のE1コンセプトは充電中の火災で焼失し、第2世代のコンセプトが引き継がれた。量産化されることはなかったが、1993年の3シリーズ・コンパクトに影響を与えた。
ヴィーズマンMF30(1993年)
マーティンとフリートヘルムのヴィーズマン兄弟は、1985年のエッセン・モーターショーに参加した後、自分たちでスポーツカーをデザインすることを決めた。ドイツの技術に裏打ちされた、英国のスポーツカーの外観を持つクルマに仕上げようとした。道路に張り付くようなクルマであることから、会社のロゴデザインはヤモリに決まった。 1993年にはMF30が登場し、その形状は長年にわたってヴィーズマン(Wiesmann)のアイデンティティを確固たるものにしていった。やがてMF30の後継としてMF3が登場し、MF4、MF5と続いた。スパイダー仕様のコンセプトが予告されたが、これが最後となった。同社は2014年に閉鎖され、英国を拠点とする投資家によって買収された。2022年、電動スポーツカー市場への参入を発表している。