盗撮画像で金稼ぐ加害者たち。潜入取材でとらえた「犯罪指南」の現場
性的画像に特化のアプリ、過去に有罪判決も
こうした投稿を繰り返す加害者は摘発されづらいのが現状だ。たとえ逮捕されて有罪になったとしても、数十万円の罰金で済むことも多い。次々に新たな加害者が登場し、まるでイタチごっこだ。 被害を防ぐ責任があるのはどこか。私はプラットフォームに着目した。 例えば動画シェアやアルバムコレクション。ウェブサイトやアプリストアの説明がきでは、「修学旅行や家族の思い出の写真を共有しよう」と謳っていた。だが私は取材を通じてそれらの写真を見たことがない。確認できた取引はほぼ全てが性的画像だ。 ほとんど同じ機能と宣伝文句を備えたアプリは、他にもいくつかある。いずれも投稿者らに性的画像の取引の場だと認識され、犯罪の温床となっている。 被害者が自身の画像が取引されていると通報しても、対応しない運営者も多い。私はこれらが、性的画像の取引に特化して作られたと考えている。 過去には「写真箱」というアプリの運営者が逮捕され、児童ポルノの陳列を幇助したなどとして2017年に有罪判決を受けた。横浜地裁が、懲役2年6月、執行猶予4年、罰金400万円の判決を下した。 投稿者に利益が還元されるポイントの仕組みが、「わいせつ画像の投稿を動機づけている」と判断されたのだ。運営者はアプリが「レンタルボックスのようなもの」「中に何が入っていてもユーザーの責任で、管理人には関係ない」と弁明していたが、認められなかった。 高裁は運営者の控訴を棄却し、地裁判決が確定した。
「拡声器」の役割果たすプラットフォーム
ところが2017年の有罪判決以降も、まったく同じ仕組みのアプリが乱立している。これらは罪に問われていない。それどころか、GoogleのGoogle PlayやAppleのApp Storeなど、誰もが簡単にアプリを入手できるプラットフォームで扱われていた。 アルバムコレクションは2023年12月、App Storeの「写真/ビデオ」カテゴリでランキング1位にもなった。2位はInstagram、4位はYouTubeだ。Googleも自社ストアに動画シェアを掲載。少なくとも10万ダウンロードがなされたことがわかっている。 これらのアプリでは、子どもの性的画像も大量に取引されていた。 ところが、両社の反応は鈍かった。私はGoogle日本法人の奥山真司社長とApple日本法人の秋間亮社長に繰り返し質問状を送付。事態の深刻さを伝えたが、返事はなかった。 結局Google側は、私が取材で接触した社員を通じて動画シェアを削除。アルバムコレクションは、米Apple本社CEOのティム・クック氏に直接メールを送信した3日後、App Storeから取り下げられた。 しかし、これらのアプリも氷山の一角に過ぎない。今もさまざまなツールを通じて、被害が起き続けている。 さらに深刻なのは、警察や画像の削除を促すはずの法的仕組みすら被害者の救済を怠っていることだ。 =つづく 【取材・執筆=辻麻梨子 / Tansa】 (※本シリーズのすべての記事は、Tansaのウェブサイトから無料でお読みいただけます。Tansaは広告費を一切受け取らず、読者からの寄付や助成金で運営する報道機関です。私たちは被害を止めるための報道を続けています。徹底的な取材のため、複数の海外出張などを実施しており、資金が不足しています。Tansaのウェブサイトで寄付を受け付けています)