女性どうしの"ふうふ"に子どもは「幸せ」 日本では認められない同性婚、カナダに移住した"家族"
子どもの「ありがとう」で気づいた 日本への違和感
りゅうさんと、みかさんは2人のことをそれぞれ「マミー」と「母さん」と呼んでいる。松本さんの「子どもたちに隠し事をしない」という考えもあり、子どもは普段から思ったことを率直に伝えてくるが、なかでも松本さんが印象に残る言葉がある。 松本くみさん 「『幸せ。生まれてよかったよ。ありがとう』と言ってくれます。例えば、ピザを作って、マミーが生地を作って、私がトッピングを作って。すごくおいしかったんですけど…。そんなときに『お母さん2人でよかった』と」。何よりうれしい言葉の反面、同性カップルにとってそれは当たり前ではないという日本の現状に違和感を抱いた。 同性婚の法制度のない日本では同性カップルの生殖補助医療に高いハードルがある。精子提供による人工授精などの生殖補助医療の法整備に向けて議員連盟での議論が進む中で今、対象が婚姻関係にある「夫婦」に限定され、同性カップルや単身の女性が対象から排除される可能性が出てきている。 松本くみさん 「お父さん、お父さん。お母さん、お母さんでもシングルでも、子どもを愛し、子どもが幸せに育つのであれば関係ないことだと思う。愛情が一番だから」 松本さんは、LGBTQ+の当事者であっても子育てをできる環境を日本で整えてほしいと訴える。
娘が首相へ手紙「認めてくれたらにっこり」
2023年に同性婚の法制化を求める団体が企画した、当事者の声を国会に届けるイベントがあった。みかさんは、岸田首相(当時)に宛てて手紙を書いた。 長女・みかさんが首相に宛てた手紙(一部抜粋) 「私は同性婚を認めてくれないから『お母さんたち結婚できてないじゃん』と言われたことがあります。ちょっとだけ泣きそうになりました。ただ性が同じだと結婚できないのでしょうか。学校の先生も近所の人も認めてます。認めてくれたらみんなにっこりしますよ!」
松本さんとノックさんは「老後は大好きな日本で暮らしたい」と考えている。ただ、日本で同性婚が認められなければ、ノックさんのビザの不安が残ったまま。「私たちが“ふうふ”じゃない、子どもたちと家族じゃない、というのなら私たちの人権をなんだと思っているだろう、と思います」。松本さんは、悔しさを滲ませる。 いつか大好きな日本で、家族みんなで心からの笑顔で過ごしたい。どんな人も愛する人とともに生きられる日本であってほしいと願いながら松本さん家族のカナダでの生活は続く。
取材後記
「生まれてきてよかった」。子どもたちが日常的に発する言葉からは“望まれて生まれてきた”という自信や、法的に認められないというハードルを乗り超えて自分たちを育てている「マミー」と「母さん」への愛を感じる。もし、日本で同性婚が認められるならば、こうした幸せを築くことに躊躇せず踏み出せる人たちも増えるのだろうか。少なくとも、現状では日本が大好きなのに日本では生活することが選択できない人たちがいることを忘れてはならないと思う。 ※この記事は、熊本県民テレビとYahoo!ニュースの共同連携企画です。
KKT熊本県民テレビ・藤木紫苑