無人の枇榔島でなぜか繁殖した侵入植物「トウチク」…伐採続け30年、ついに1本も見当たらず 生態系守る取り組み結実
鹿児島県志布志市の国指定特別天然記念物「枇榔島亜熱帯性植物群落」で、生態系を崩す恐れがあった侵入植物「トウチク」の排除に成功した可能性が高まった。11月の現地調査で見つからず、適期の伐採による対策が成功したとみられる。寺田仁志文化庁非常勤調査員(71)=鹿児島市=は「排除できたのではないかと推察される。今後も継続的なモニタリングが必要だ」と話している。 【写真】1997年に枇榔島で行われた調査時の写真。竹が高く成長し林立している(志布志市教育委員会提供)
1994年に本紙が「枇榔島にナゾの竹茂る 南方産? 生態系を一部侵食」と報道し、島での繁茂が問題視されてきた。その後、自治体や管理者の大隅森林管理署、専門家による会議で対応を協議。定点調査と伐採を行うようになった。 寺田さんによると、トウチクは通常直径2~3センチだが、当時の枇榔島では8センチほどになり、高さ約12メートルに成長した数千本が林立し、ビロウ林にも迫っていた。駆除を始めたが減らないため、2006年度に全て伐採する方針を決定。初夏と秋の年2回、伐採と抜き取りを重ねた結果、21年度以降は確認されなくなった。 今年は11月18日に現地調査と植生管理会議を開催。排除に成功したとみられるため、調査を3年に1回にすると決めた。市教育委員会生涯学習課は「今後も専門家のアドバイスと大隅森林管理署の協力の下、経過観察を続けていきたい」としている。 寺田さんは国天然記念物の指定・保護の調査を担当し、枇榔島のトウチク対応にも06年から携わる。「モウソウチクや外来種に悩まされる地域も多い。時間をかけて根気強く対策すれば効果が出ることや、文化財を守るため、自治体や所有者らが長く努力していることを知ってもらえれば」と説明している。
■枇榔島 志布志市の沖合約4キロに位置する、周囲約4キロ、面積17.8ヘクタール、標高83メートルの無人島。日南海岸国定公園に含まれ、ビロウを中心とする亜熱帯植物群の宝庫で、1956(昭和31)年に「枇榔島亜熱帯植物群落」として国特別天然記念物に指定された。中腹に枇榔神社がある。かつては海水浴客らでにぎわった。
南日本新聞 | 鹿児島