日本移住で「他人」に逆戻り 台湾の同性“ふうふ”が直面した困難「何も隠さない生活ができたら」
取材・撮影:KKT熊本県民テレビ
「書類には『夫』と『妻』の欄しかなく、どう説明するか困ってしまった」。台湾出身の男性は複雑な思いを口にした。生まれ育った台湾では、男性どうしのカップルとしてパートナーと結婚し、法律上も“ふうふ”だと認められている。台湾は2019年にアジアで初めて同性婚が法制化されたのだ。 しかし、法律のない日本では2人は“他人”に戻ってしまった。「何も隠さない生活ができたらどんなに幸せだろう。だからこそ、法律は重要な一歩」。海外から日本に来た同性カップルが感じた日本での困難とは。(取材・文:KKT熊本県民テレビ 記者 藤木紫苑)
法的にも夫夫(ふうふ)「愛は特別なことじゃない」
台湾出身のハオさん(仮名・39)と、ミンさん(仮名・39)は、付き合って22年になる男性カップルだ。ミンさんの仕事の都合で2023年から熊本県に移住し、県内のマンションに2人で暮らしている。 細かい気配りが上手なハオさん、おおらかで芯が通った印象のミンさんは高校の同級生だった。学校行事などをともにする中で次第に互いが気になる存在になったという。その時には、自分たちのセクシュアリティーについて自覚することもできず、ミンさんは「これはどんな関係なのだろう」と戸惑いながらも、「好きだという気持ちに間違はいない」と互いを信じてこれまで進んできた、と振り返る。
台湾では2019年5月、アジアで初めて同性婚が法制化された。2人は翌年の2020年に婚姻届を提出。20年近く一度も別れることなく一緒に過ごしてきたが、法的にも認められ「ようやく政府が認めてくれた。これで平等になれる」と、安堵したという。婚姻届を出すため市役所の窓口に行くと、男女の婚姻と変わらない“普通”の対応を受けたのだとミンさんは誇らしそうに話した。 ミンさん 「普通の法律婚の申請の手順でした。窓口の女性に祝福ももらいました。そういう“普通”をたぶんみんなが求めていることだと思う。特別ではなく、普通。だって愛は特別なことじゃないから」