「結婚はまぶしくて手が届かないもの」 法律上は〝他人のまま〟の同性カップル、希望のためにたたかう
取材・撮影:KKT熊本県民テレビ
男性はしばらく考えたあと、噛みしめるように記者の問いかけに答えた。「“僕たちは家族なんです”と言えるのは、とてもまぶしくて手が届かないものだと考えています」。男性の隣には、一生ともに生きていくと誓った男性が座っている。 熊本市で暮らす会社員のこうぞうさん(42)とゆうたさん(41)は、出会って22年の男性どうしのカップルだ。全国で一斉に争われている同性婚訴訟の原告でもある。親や友人、大切な人たちが認めてくれても、2人の関係は“法律上は他人のまま”。2人の願いは、「“ふうふ”として暮らすこと」。そして、「これから生まれてくる」同性愛者をはじめとするLGBTQ+の当事者に希望を残すこと。(取材・文:KKT熊本県民テレビ 記者 藤木紫苑)
婚姻届け提出も不受理 不安抱える暮らし
熊本県熊本市で暮らす、会社員のこうぞうさん(42)とゆうたさん(41)は出会って22年の男性どうしのカップルだ。こうぞうさんが飲食店で出会ったゆうたさんにひとめぼれして付き合いはじめた。進学や就職で一度は別々の道を歩んだものの、縁あって再び交際することになり、5年前から一緒に暮らしている。料理が得意なのはこうぞうさん、運転をするのはゆうたさんの方だ。「この先も一生ともに生きていきたい」と心に決めた2人は自然と「結婚」を意識するようになった。 2020年3月、同性を理由に結婚ができないのは不平等ではないか、と疑問を持っていた2人は、熊本市役所に婚姻届を提出。すると窓口からは、「男性同士を当事者とする本件婚姻届は不適法であるため」として書類が返却された。いま熊本市をはじめとする多くの自治体では、同性カップルをパートナーとして認める『パートナーシップ宣誓制度』を導入している。公営住宅にパートナーとして入居できたり、企業の福利厚生を受けやすくなったりするなど関係性を証明するものとして利用できるが、制度に法的な効力はなく、相続や税金の控除、それに手術の同意書を書くことなど婚姻関係と同じ権利は得られない。 こうぞうさんは、「もしも」の時の不安を抱えながら生活することに変わりはないと話す。「事故や病気で片方の意識がない時に病院で家族として扱ってもらえない場合がある」。相手がどんなに大切な人であっても法律上は、他人のままなのだ。