“ブラックホールは存在した” アインシュタインの理論を100年かけて証明した科学者の情熱
アインシュタインはやはり正しかった――。大きすぎる重力のため、光すらも脱出することができないという天体「ブラックホール」。その存在を示す直接的な証拠を史上初めて示せたというニュースが、今年4月に発表されました。 【画像】実は謎が多い水星 探査機「みお」と「MPO」が挑む“宿題” 観測されたのは、地球からおとめ座の方向に約5500万光年離れた場所に存在する銀河「M87」の中心部。その歴史的快挙に感動する方もいれば、逆に、これまでブラックホールの存在が確かではなかったことに驚く人もいるかと思います。
ブラックホールの概念は、物理学者アルベルト・アインシュタイン(1879~1955年)が1915年から1916年にかけて発表した「一般相対性理論」から生まれました。それから約100年間、科学者たちは、目に見えないブラックホールの姿を、理論的検証と観測を積み上げながら、想像を膨らませて思い描いてきたのです。 科学者たちは、ブラックホールが存在するというアインシュタインの理論による予言から、直接それを撮像するに至るまで、理論的根拠と証拠のパズルをどのように組み立ててきたのでしょうか。アインシュタインが相対性理論を最初に発表したとされる6月30日に合わせて、その壮大なストーリーを紹介します。
一般相対性理論が予言した「架空の天体」
アインシュタインの一般相対性理論によると、質量を持つ物体が周りの空間にひずみを生み出し、そのひずみによって重力が生じます。 1916年、物理学者カール・シュヴァルツシルトは、一般相対性理論の重力の方程式をある条件の下で解き、ブラックホールの存在を理論的に予言しました。極端に「小さく」、「重い(=質量が大きい)」物体が存在する場合、ある距離よりも中心に近づくと、宇宙の中で最も速い光すら外に脱出できなくなります。その領域こそがブラックホールです。(ブラックホールは、極端に「小さく」て「重い」条件で現れるということを念頭においていただければ後の説明も理解しやすいと思います)