吉野氏が化学賞「リチウムイオン電池」研究の歴史がつなぐ50年後のノーベル賞
2019年のノーベル賞の授賞式がスウェーデンのストックホルムで12月10日(日本時間11日未明)に開かれます。ダイナマイトの開発で莫大な富を築いたスウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルの名前を冠したこの賞は、ノーベルの遺言に従って1901年に創設され、「人類のために貢献した人物」に毎年贈られています。今年は「リチウムイオン電池の開発」に貢献した旭化成の吉野彰名誉フェローと米国の2氏が化学賞を受賞しました。 【写真】ノーベル賞の吉野氏、リチウムイオン電池で「再エネ普及しやすくなる」
日本人研究者も受賞したことから、発表後のニュースで 「リチウム」「リチウムイオン」 という言葉を耳にした方も多かったのではないでしょうか。かつてないほどその名が飛び交った「リチウム」という元素が今年のノーベル化学賞の主人公といっても過言ではないかもしれません。今回はそんなリチウムと電池の関係についてひも解きながら、あらためて今年の化学賞を振り返り、さらにその未来について考えてみます。
「リチウム」と「リチウムイオン」の関係
皆さんは「リチウム」から何を連想するでしょうか。 周期表で「水素(H)」「ヘリウム(He)」に続く3番目の元素がリチウム。記号で書くと Li です。ちょっとかわいい雰囲気ですよね。周期表で色付けをしたように、「金属」に分類される元素の1つです。
原子の構造という点から、もう少し詳しく説明したいと思います。リチウムは「プラスの性質をもつ陽子3つ」「中性子4つ」「マイナスの性質をもつ電子3つ」からなる元素です。つまり、リチウムは通常プラス3の陽子とマイナス3の電子がつり合っていて、外からみた電荷は0です。
先ほど電子が3つと言いましたが、そのうちの2つは中心(原子核)に近いところにすんでいて、残りの1つは少し遠いところにすんでいるイメージです(図1)。実は、この外側にある電子がリチウムから離れてしまうことがあります。こうしてマイナスの電子を1つ失ったリチウムは、全体として電荷が+1になります。これが「リチウムイオン」です。 (※)元素と原子、電子……原子はすべての物質を構成する粒子。元素は原子の種類や性質を表す。原子は、中性子と陽子(プラスの性質)からなる原子核と、電子(マイナスの性質)でできている。