「隠さなくてはいけない」と思い込んでいた――子のカミングアウトに親はどう向き合う? #性のギモン
心配でも、ネガティブな言葉で子どもを追い詰めないで
性別違和、性別不合のカウンセリングを行うはりまメンタルクリニック(東京都千代田区)の針間克己院長によると、思春期に身体が変化していく違和感や孤立感、いじめなどにより、自殺念慮を抱くケースがかなり多いという。 はりまメンタルクリニックの受診者に関していえば、約6割が自殺念慮を抱いた経験があるという統計が出ている。リストカットなど、自傷行為に走る例も、中学・高校の頃から増えていく。針間院長はこう話す。 「親の中には、通院することで性別を変えたいという気持ちが収まるのではないかと期待している方もいる。一方、子どもはいずれ身体の治療を受けたいと希望し、双方の気持ちが相反している場合もある。親が期待を込めて『そのうち治る』という言葉を発すると、子どもは、親は深刻に受け止めてくれていないんだと絶望する可能性もあります。悩んでいる子どもを否定しても問題は解決しませんので、身体の治療には賛成できなくても、まずは受け止めてほしい。実際、望みの性別へ治療を急ぐことは必ずしも正解ではなく、精神科医の立場としては慎重です。性別違和が原因で不登校になるケースも少なくないので、学校と話し合いをするなどして援助していくことが必要だと思います」 子どもがこの先、苦労するかもしれないと心配するのも親心だろう。だが、「社会で生きていけない」などのネガティブな言葉はNGだと針間院長は言う。 「誰よりも本人が、そのことを一番怖がっている。そこへ親がダメ押しするようにその言葉を言うと、子どもを追い詰めることになりかねません」 針間院長によると、子どもから親へのカミングアウトは、1回きりのものではないという。何度も話し合い、お互いにわかり合うことが大事だ。 「情報や知識を得ることも大事ですが、それに引きずられすぎるのもよくない。子どもがどう感じ、どんなふうに悩み、それについてどう取り組んでいこうとしているのか。子ども自身の言葉を丁寧に聞き、悩みに真摯に向き合うことが、何より大事だと思います」