「隠さなくてはいけない」と思い込んでいた――子のカミングアウトに親はどう向き合う? #性のギモン
何気ない言葉で子どもが傷ついている場合も
カミングアウト後、宏堂さんの母親は自分の何気ない言葉によって子どもがトラウマを抱えていたことを知り、少なからずショックを受けたという。 「宏堂が4歳か5歳の頃、親戚のお姉さんにマニキュアを塗ってもらって喜んでいるのを見て、『こういうことをする大人になってほしくないな』と言ったことがあります。実は私自身がマニキュアを塗ってみたら、爪が呼吸できない感じがしてつらかったので、これは健康によくないと思っていたのです」 ところが宏堂さんは、「自分が女の子っぽくしたら母親はイヤなんだ」と受け取り、ジェンダー・アイデンティティーを親に隠さなくてはいけないという気持ちが強まった。 親にそのつもりがなくても子どもは傷つくことがある。また、「自分の存在が親を悲しませる」「がっかりさせたくない」という思いから、親へのカミングアウトをためらうケースもあるだろう。 では親として、どう子どもと接するのがいいのか。当事者や家族の支援などを行う「NPO法人LGBTの家族と友人をつなぐ会」の東京理事、三輪美和子さんに話を聞いた。 「『子どもからカミングアウトされたけれど、気持ちがついていかない』と葛藤を抱えている親御さんも少なくありません。交流会にはLGBTQの当事者も参加しているので、自分の子どもにはなかなかストレートに聞けないことでも、参加者になら質問できたりもします。また、他の親御さんの話を聞くことで、それぞれの親が、自分たちの親子関係に落とし込んで考えていけるのです」 子どもから「お父さんには言わないで」と言われ、母親がひとりで抱え込んで相談に来るケースも多いという。例えばテレビでゲイのタレントが出てきた時、父親が「気持ち悪い」などといった発言をすると、子どもは父親に自分が同性愛者であることを知られたくないと思うようになる。 LGBTQに対する親の意識には、地域差もあると三輪さんは語る。家意識が強く、長男には家を継承していく役割が強く求められる地域では、長男が同性愛者やトランスジェンダーであることを親は受け入れにくいケースも。世間体や「親戚に顔向けできない」といった考えが根強い場合もある。ただ、自治体が積極的にパートナーシップ制度などを取り入れるなど、自治体の取り組みによって変化も生まれるのではないかと三輪さんは期待している。