「隠さなくてはいけない」と思い込んでいた――子のカミングアウトに親はどう向き合う? #性のギモン
「カミングアウトされ、長年解けなかったパズルが解けた」
当時つき合っていたボーイフレンドを両親に紹介するというきっかけでカミングアウトしたいと思い、まずは「つき合っている人がいるんだけど、その人、男性なんだよね」と伝えた。その時の気持ちを、「緊張のあまり手が震えて、身体が冷たくなって。でも、自由になりたいと思い、勇気を奮いました」と宏堂さんは振り返る。 宏堂さんの母親は、宏堂さんが幼い頃から、なんとなくまわりの子どもたちとは違うと感じていた。お姫さまごっこをしたり、「男の子とは遊びたくない」と言ったりする宏堂さんを心配し、地元の教育センターの臨床心理士に相談したこともある。 「カミングアウトされ、長年解けなかったパズルが解けたような、スッキリした気持ちになりました。ただ、両親から拒否されるのではないかと怖くてなかなか言えなかったと聞き、そんな親だと思われていたのかと、ちょっと残念な気がしました」 それから、LGBTQに関する情報を積極的に取り入れるようになった。「私は孫の顔を見たいなんて、全く思っていない。こうちゃんが大事。こうちゃんが幸せでいてくれることが、私の望みなんだから」と伝えた。 「今の社会は、マイノリティーとして生きていくのはまだまだ困難があるでしょう。そうした状況のなか、我が子に対して一番の味方になれるのは自分だと思っています」
寺院の住職である父親はうすうす気づいており、カミングアウトした際、「自分の人生なのだから、好きなように、自分らしく生きなさい」と言葉をかけた。ただ、我が子が社会からはじき出されるのではないかと心配し、世間に対してはわざわざ公表しなくてもいいのではないかとも告げた。その後、檀家さんや宗派の人たちの理解も得られ、応援してくれるように。LGBTQの人権活動を行うようになった宏堂さんを、今は親として誇りに思っているという。 両親へのカミングアウトから10年を経た今、宏堂さんはこう語る。 「本来、自分がどんな人を愛するかは、他人には関係のないこと。自分の恋愛について他人が意見したり、幸せになる権利を奪ったりすることは悲しいことだと思います。同性愛者の知り合いの中には、周りの期待に答えようと、異性と結婚をして子どもを迎えたという人もいて、複雑な気持ちがします。みんなカミングアウトするべきだとは思いませんが、私は自分らしく生きる決心をしてから、本来の自分の人生がスタートした気がしました。自由であることは幸せだと感じます」