「本野はきもの工業」が作る、現代のライフスタイルでも履きやすい日田下駄
広島県福山市や静岡県静岡市と並び、下駄の三大産地のひとつとして称される大分県日田市。日田市で製材された木を使い、日田市で製造された下駄は、「日田下駄」と呼ばれている。日常履きを目的として作られていることから、軽く、歩きやすいのが特長だという。 およそ180年の歴史があると言われている日田下駄だが、その製造を担う工房は減りつつある。そのようななか、本野はきもの工業では自社で一貫して製造できる体制を整え、未来へと日田下駄の歴史を紡いでいる。 今回は、同社で代表を務める本野さんに、同社の取り組みや日田下駄の魅力などについて話を聞いた。
実際に触れることで、日田下駄の魅力に気付く
ーまず、御社について教えてください。 弊社は日田下駄を製造・販売している工房で、1948年に創業しました。今は2代目の父と母、3代目の私と妻の4人で経営を行っています。 もともと、両親は自分たちの代でこの工房をたたむつもりで、私も継ぐ予定はありませんでした。しかし、私が一般企業に勤めていたときに工房を手伝う機会があり、そのときに日田下駄の魅力を知って。もの作りをする面白さを感じたので、継ぐことにしました。 ーどのような魅力を感じたのでしょうか? 職人たちの思いやこだわりが詰まっているところです。私は、小さい頃から下駄が身近にあったので、細かな工程まであまり意識したことがありませんでした。下駄は材料を磨いて、塗って、鼻緒を付けたら完成だと思っていたのですが、そんなに簡単なものではなくて。 職人さんたちの作業風景をちゃんと見るようになってから、完成するまでにいろいろな背景があることに気付いたんです。下駄の奥深さを知って、改めて魅力を感じるようになりました。 また、カジュアルなスタイルにも合わせられることに気付きました。現代ではスニーカーが一般的になっていて、下駄はどんどん履く機会がなくなってきていますよね。“どうすれば履いてもらえるのか”を考えるようになってから、より一層もの作りを楽しめるようになりました。