「本野はきもの工業」が作る、現代のライフスタイルでも履きやすい日田下駄
ー御社が作っている下駄の特徴を教えてください。 弊社の下駄の特徴は、地元で採れた杉を使っていることです。オリジナルのデザインで作っている下駄も多く、商品数が豊富だと思います。 目指しているのは、ライフスタイルに溶け込める下駄です。特別な履き物ではなく、カジュアルに普段履きとして取り入れてほしいと思っているので、新しい商品を作るときはそういった点を意識しています。 また、作るときには、どういう人がこの下駄を履くのかな、履きやすいと言ってもらえたらうれしいな、といったことを考えながら作業にあたっています。 ー面白いデザインの下駄が多いですよね。どういう発想から生まれたのでしょうか? 私の実家が下駄を作っていることを知っている友達が、「こういう下駄があったら面白いよね」「こういう下駄があったら履きたいよね」と、以前からいろいろな案を出してくれていました。 家業を継ぐまでは、それを形にする機会がなかなかなかったのですが、自分自身がもの作りに携わるようになってから、いろいろな職人さんとの出会いがきっかけで、そのアイディアを具現化することができるようになったんです。 また、さまざまな企業からお声がけいただき、映画の衣装として採用されたり、有名ブランドのオリジナル下駄を製作したりと、コラボレーションも実現しています。 コラボレーションをさせてもらうと、今まで下駄に関心がなかった方にも知ってもらう機会になるので、とてもありがたいですね。
異なる表情を持つ木地と向き合う面白さ
ー日田下駄の製造工程を教えてください。 弊社では、まず製材所から「下駄枕」という下駄の原型を仕入れます。その後、下駄の木地作りをして、磨き、加工、塗装を経て完成です。 弊社では3種類の鼻緒を使っていて、ひとつは鼻緒を専門に作られている奈良の職人さんが、残りの2種類は自社で作っています。 ー難しい工程はありますか? どの工程も大切ですが、磨きは特に気を遣います。たとえば、同じ杉でも硬い木や柔らかい木があるので、木地を磨くときには機械への押し当て方や力具合を変える必要があります。父と私とでは、押し当て方がまったく異なりますね。 磨きの段階で“よくできた”と思っても、塗装したときに小さい傷が目立つこともあって。本当にきれいに仕上げられるようになるまでには、数年かかると思います。 また、下駄枕には個体差があります。硬さもそうですが、模様も全然違うので、一つずつ触りながらどういう風に磨きをかけるかを見極めなければなりません。それも難しいんです。 塗装の際には一つひとつハケで塗っているのですが、慎重に塗らないとムラができてしまいます。そうならないようにするのにも、やはり気を遣います。 ただ、塗装は私の好きな工程のひとつで。木地は一つひとつ表情が違い、真っ直ぐな木目もあれば、複雑な木目もあり、それを見るのが楽しいんです。