「本野はきもの工業」が作る、現代のライフスタイルでも履きやすい日田下駄
ー木地一つひとつに違った表情が見られるんですね。 重さや色も全然違うんですよ。杉の木は、幹の中心になるほど赤くなっているんです。塗装で同じ色をのせても、赤っぽい木地だと色の出方が変わってくるので、そういった点は面白いなと感じています。 僕たちは幹を切った状態しか見られないのですが、なかには樹齢100年のものも混ざっているかもしれません。 日田下駄が発展した背景には、土地柄も関係しているんです。日田は林業の町で、昔から木は建築材として使われてきたのですが、「根曲がり」と呼ばれている曲がっている木の根っこの部分は、建築材には使えません。 昔は建築材として使えない部分は山にそのまま残していたんですが、そういった木材をうまく活用できたから、下駄作りが盛んになったようですね。 ーご家族で事業を行われていますが、役割分担はされているのでしょうか? 私は、主に広報を担当しています。父は機械に強いので機械を扱うような作業を、母は細かい作業が得意なので鼻緒などの細かい作業を、妻はパソコンが得意なのでプログラミングやネット関係の仕事をしています。 今は業務を分担して作業しているので、誰か一人でも欠けると作業に影響が出てしまうのが課題ですね。 両親からは、「私たちが引退した後は、あなたたち2人でできる規模の事業をやりなさい」と言われているんですが、弊社としては4人体制がベストな状態なので、今後のためにも若い職人さんを育てて、一緒に仕事ができたらいいなと思っています。 ー若い方が入ってくるために、どういうアプローチが必要だとお考えですか? いきなり言葉で伝えていくのは難しいと思うので、まずは下駄の魅力を知ってもらいたいです。“興味を持ってもらうためにはどうしたらいいか”は、常々考えています。 給与との関係もあると思いますが、やはり“好きだからやりたい”という気持ちがある方と一緒に仕事ができるとうれしいですね。