井上尚弥いとこ浩樹が7回戦慄KO勝利でアジア王者“2冠“奪取もモンスターの助言が途中で止まった理由とは?
ボクシングのWBOアジアパシフィック・スーパーライト級王座決定戦が2日、東京・後楽園ホールで行われ、同級1位の井上浩樹(27、大橋)は同級5位ジェリッツ・チャベス(28、フィリピン)に7ラウンド3分8秒、左ストレート一発でKO勝ちし日本タイトルに続く“2冠”を達成。初のWBOの地域ベルトを大橋ジムへもたらし世界ランキング入りを確実にした。今後はどちらかのタイトルを返上して、世界挑戦へターゲットを絞る。
戦慄の左ストレート
その瞬間を待っていた。 「疲れて(パンチを)振ってこなくなったところで狙っていこうかな」 うなりをあげるような左ストレートがカウンターとなってフィリピン人の顔面をとらえた。強烈な衝撃にドタっと倒れたチャベスは、キャンバスに大の字になった。 「手ごたえがあった。もう立ってくれるなと思った」 それでもOPBF東洋太平洋同級王者、内藤律樹(E&Jカシアス)、岡田博喜(角海老宝石)らの強豪を苦しめてきたファイターの本能がチャベスを立たせた。だが、ファイティングポーズもとれず、福地レフェリーはテンカウントを数えた。 「右フックは外されていたから当たるとすれば左ストレート系だと思っていた。右フックを警戒させておいて、左ストレートにつなげたいと上下に散らしてきた。狙ったストレートが入ったんで気持ちよかった」 計算づくの一発。 先のWBC世界ヘビー級タイトルマッチで、王者のデオンティ・ワイルダー(米国)が、40歳の挑戦者、ルイス・オルティス(キューバ)の体力消耗を待ち、カウンターを浴びる危険のある宝刀の右ストレートを温存。井上と同じく7ラウンドに「今だ」とタイミングを見逃さず右ストレート一発でリングに沈める戦慄のKO劇を演じたが、まさにワイルダーにも重なるパンチャーゆえの劇的展開。10度防衛のスーパースター、ワイルダーと、まだ世界への入り口にたったばかりの井上を比べるのはナンセンスだが、そのラウンドといい、狡猾な我慢の時間といい、どこかに相通じる可能性が光った。 ただ両者の実力差を考えると決着はもっと早くて良かった。浩樹も、そこまでの6ラウンドに納得はしていない。 「見ている人のうっ憤がたまるような試合をしてしまった。許して下さい。相手が、“打ち合え!“と言っていたのに……(打ち合わずに)申し訳ないなと思いました。謝りたい」 1ラウンドから9勝7KOの強打を異常に警戒し、ディフェンスに重きを置き、慎重に試合を進めた。 「パンチが強い選手。しかも、打たれ強くKO負けもない。僕自身も初めての12ラウンド。慎重にいかせてもらった」 1ラウンドは足を止めて向かいい合ったが、徐々にステップワークを使った。「どんな出方するのかが気になった。足を使った方がいいのか、止まったまま応戦していいのか、考えた。元気よく(パンチを)振ってくるので足を使って空回りさせた」 緊迫の序盤。リングサイドの一番前に座った井上尚弥から大きな声が飛んでいた。 「大きいのに気をつけて!」 「もっと強弱!」