井上尚弥いとこ浩樹が7回戦慄KO勝利でアジア王者“2冠“奪取もモンスターの助言が途中で止まった理由とは?
ジャブが少ないとみるや「もっとジャブで作っていけ!」とも指示した。 3ラウンド。チャベスの打ち終わりに狙っていた右フックを餌に、スピードで勝る左ストレートが何発かヒットすると「そのストレートだよ。どんどん打っていけ、左ストレート」と声のトーンを上げた。だが、その後も、浩樹のペースが一向に上がらない。業を煮やしたのか、5回以降、WBSS優勝者のアドバイスは聞こえなくなった。 「(尚弥のアドバイスは)全部聞こえていた。その通りだなと(笑)。でも、なかなか、言われる通りにできなくて歯がゆい気持ちでやっていた。むこう(尚弥)も歯がゆい気持ちで見ていたのでしょう」 ボクシングに慎重さは重要だ。恐怖心、警戒心を持たない戦いを無謀と呼ぶ。だが、その恐怖を乗り越えた勇気の向こう側にファンを感動させるプロのボクシングがある。その境界線が難しいことは確かだが、スピードやコンビネーションで圧倒しながらも、踏み込んで打たず勝負をかけようとしない浩樹のスタイルに”聖地・後楽園”からは、心ないヤジも飛び交った。 「ヤジが飛んでいたんですか? 振りが大きくて相手のパンチは見えていたんです。ジャブも使いたかったし出すジャブは全部当たったのに、なんで出さないんですかね? ボディも、ちょっと嫌で考えちゃった部分もありました」。 反省点ばかりが口をついた。 浩樹担当の佐久間史朗トレーナーも「あのまま判定でいくとまずいという雰囲気があったね。声援も少なくなってきた。最初からいけば、もっと早い結果(KO)を出せると思った。怖いのかな?とも思ったよ」と振り返った。それを聞いた井上は「スタミナが心配だったんですよ」と理由を説明した。 実は、“アニオタ“の浩樹は、ファンのバンド名「ポピパ」の文字を入れたピンク色のハッピを来て入場するのが定番だったが、初のWBOアジアパシフィックの挑戦を前に「緊張して家に忘れてきた」ため、Tシャツ姿でリングインした。 「それがショックでテンションが上がらなかった」 これも1ラウンドから攻撃的な姿勢を見せられなかった理由のひとつだったのかもしれない。