なんと体重が「一瞬で激減」する場所があった! ところが「ダイエット」にはならないたった1つの理由
「質量」は不変だが「重さ」は……?
「質量と重さの違い」としてもう一つ、決して無視できないものがあります。質量が不変である一方、重さは劇的に変化しうるということです。 「5個のリンゴ」を思い浮かべてください。5個のリンゴは、地球上においても、月の表面や火星の表面であっても、5個は5個で、その量(数)が変わるはずはありません。 筆者の質量も同様です。地上においても月面においても、火星表面や国際宇宙ステーション内部の無重力空間(正確には「無重量」空間)であっても、あるいは他のどのような空間にいようとも、筆者の体の質量は67kgであり、まったく変わりありません。 それでは、5個のリンゴの重さや、筆者の体重はどうでしょうか?
火星や金星で測ったら?
先ほども確認したように、地球上における筆者の体重は670Nです。この数字の意味するところは、「地球が筆者の体を地球中心に向かって引っ張る力」のことでした。しかし、もし筆者が月面に行ったなら、この数字はまったく異なるものになります。 なぜなら、「筆者の体を引っ張る力」の源が、もはや地球ではなくなるからです。地球に比べ、「月が筆者の体を月の中心に向かって引っ張る力」ははるかに小さいので、月面における筆者の体重は670Nよりも小さくなります。 月に限らず、火星や水星、金星や木星など、太陽系の各惑星の表面上にある、ある一つの物体にその惑星が及ぼす「その惑星の中心に向かって引っ張る力」、すなわち「その惑星における重力(重さ)」は惑星ごとに異なりますが、その物体の質量は、どの惑星に置かれていようと一定不変で、まったく同じ値(kg)です。 言い換えれば、式3で「重さ(重力)」を表す「mg」において、質量mの値は惑星の種類に関係なく一定ですが、重力加速度(落下加速度)を表すgの値は惑星ごとに異なります。式3重力=mɡ 単位はN(ニュートン)
激減する体重
先に示した「g=10m/s²(正確には(9.8m/s²)」は、あくまで地球上においての値です。たとえば、月面におけるgの値は1.62m/s²なので、月面での重力加速度は地球表面におけるそれの約6分の1です。 すなわち、月面上で物体を放すと、その物体を地上で放したときよりゆっくり落下します。つまり、月が物体に及ぼす重力は、地球が物体に及ぼす重力より弱いのです。 そして、筆者の質量は広大な宇宙のどこでも67kgと変わりませんが、月面での筆者の体重「mg」は(67kg)×(1.62m/s²)=108Nへと変化します。地球上では670Nであった筆者の体重が、月面では108Nに「激減」してしまうのです。 月の表面には空気が存在しないことが知られていますが、それは、月の重力が弱すぎて、空気を月の周囲に引きとめておくことができないからです。月の表面は事実上、かなり真空に近いといえます。 重力のからくり――相対論と量子論はなぜ「相容れない」のか 自然界を支配する4つの力の中で、最も身近で最弱の力。 この宇宙に現在の構造をもたらした最大の貢献者でありながら、なぜか「標準模型」に含まれない異端児=「重力」。 素朴な問いから「物理学最大の難問」まで一気読みさせる好著!好評のからくりシリーズ その他の既刊光と電気のからくり詳しい内容はこちら量子力学のからくり詳しい内容はこちら真空のからくり詳しい内容はこちら時空のからくり詳しい内容はこちらE=mc²のからくり詳しい内容はこちら
山田 克哉