井上尚弥の父が語るーラスベガス衝撃KO勝利の真実
全米を震撼させたのは7ラウンドのフィニッシュブロー。マロニーが右のパンチを繰り出そうとした瞬間、顔面に叩き込んだ右のショートカウンター。マロニーは足を折るようにして倒れ、カウント8で起き上がろうとしたが、ふらつき、もう一度手をつき尻餅をついた。 「今回、マロニー対策として、かなり練習を積んだカウンターでした。尚は、必ず頭を下げて肩越しから打つ。(被弾の)リスクを減らした上でのカウンターです。ドンピシャのいいタイミングでした」 スロー映像で見ると井上は頭の位置を左へずらし被弾のリスクをなくした上でショートカウンターを叩きこんでいる。 井上をプロモートしているトップランク社は、SNSに練習中の右のカウンター映像と、実際の今回の試合で放ったパンチの映像を重ねて編集した動画を投稿している。2つのパンチは、まったく同じ。完璧に準備したパンチを勝負のリングで具現化したのだから「あのパンチは100点満点ですね」と自画自賛したのも当然だろう。 だが、実は、親子の間では、試合後に、こんな会話があったというから驚きである。 「試合が終わってから尚と話したんです。もう拳1個、1個半分、前で当てていれば、相手は起き上がってこれなかったなと。少し距離が詰まってショートになった。ほんの少しですが、尚がぐっと前に行ったことでパンチが死んでいるんです。完璧な距離で当てていれば一発で大の字です。起き上がろうとすることもできなかったでしょう」 100点満点のさらに上を目指す。「チーム井上」が目指すものは、もっと上にある。この向上心が、強さの秘密なのだ。 完璧なKO勝利の中でひとつだけ気になったのは、7ラウンドが始まる前に、両足の太腿を上に上げてポンポンとグローブで叩いた行動。井上は、「左足に違和感があった」と明かした。真吾トレーナーも、「減量の厳しいライトフライ級時代に足が攣ったことがありましたよね。あそこまでひどくはありませんでしたが、若干、似たような違和感だったというんです」という。