酸素はどこから生じたのか?先カンブリアの生物が起こした一大ミステリー
1.比較的短期間(=約1.6億年間:地球と酸素の歴史にとっては非常に短い)にかなりの量の酸素が急激に大気に放出された。 2.現在の大気中の濃度と比べて10%近くのガス成分を占めていた推定値も出されている。この値は先カンブリア代を通して極端に高い。 3.このGOEという現象は地球規模で起きた。 4.GOEの終わりころに酸素レベルは再び(急激に)落ち込んでいる。 5.この急激な大気中の酸素の消滅は、非常にたくさんの鉄分を含んだ岩石の「酸化現象」によると考えられている。この時代の地層から、地球史上初めて「錆付いた」物資がたくさん見つかり出す。酸化は酸素が大気上に存在した直接の証拠とみて間違いないだろう。) さてこのGOEという現象はどのようにしてはじまり、そして進行していったのだろうか?
大気酸素の供給源としての先カンブリア代生物群
先カンブリア代前期から中期にかけて出現していた生き物は、全て単細胞生物だ。まずバクテリアや古細菌(Archaea)などの原核生物群。そして初期の真核細胞をそなえた種がいくつか現れていた可能性もある。(この件は「ストロマトライトの発見(上)」において大まかに説明してある) その中でも光合成を行っていた単細胞生物種が、約20億年前に起きたThe Great Oxidation Event(GOE)における酸素の直接の供給源のはずだ。光合成とは日光と水そして二酸化炭素を元にして生を支えている――そして酸素を体内より放出する。植物も光合成を行うが、植物の定義として一個体に無数・多数の細胞があり水を吸い上げるための根や管のような組織を供えているものをさす(さまざまな葉や茎等の器官を持つものも進化上すぐに出現した)。最古の陸生植物の化石は約4億7500万年以上前まで待たねばならず、陸生植物の多様性(例えば木の登場や森林の出現)は、デボン紀中頃(3億9000万年前頃)以降に起きた。 先カンブリア代中期に起きたGOEのはじまる直前、恐らくストロマトライトの化石で知られる「シアノバクテリア」などの生物が、酸素の直接の供給源だったのだろう。しかし化石記録におけるバクテリアなどの単細胞生物は、その非常に小さな体の大きさや(ほとんどを水分で占められる)構造上、非常に限られている。何十億年前という条件を考慮すれば化石として見つかること自体、奇跡的といえる。詳細な生物の多様性や進化パターンと、大気中の酸素濃度パターンとの関連性を突き止めることは、やはりなかなか簡単にはいかない。