キノコのような寄生植物 花粉もタネも同じ虫が運ぶ例を初確認
花粉を運ぶのは虫、タネを運ぶのは鳥。そんな常識を覆す生き方をする植物を、神戸大学などのチームが見つけた。花粉とタネ両方を同じ昆虫が運んでおり、世界でも例がないという。5日、専門誌に論文が掲載された。 【写真】アマクサツチトリモチの花を訪れたカマドウマ=神戸大学(研究当時)の橋脇大夢さん撮影 歩いて動けない植物は、花粉を別の花に届けたり、遠くにタネを広げたりするのに、動物の力を借りることが多い。陸上植物の約9割は昆虫に花粉を運んでもらい、半数以上は鳥や哺乳類をタネの運び手としている。ただ、その両方を同じ生きものに依存するのは珍しく、限られた報告も鳥によるものがほとんどだった。 チームは、熊本・天草諸島や鹿児島の薄暗い森に生える「アマクサツチトリモチ」に注目した。ハゼノキに寄生し、光合成をせずに生きる植物で、キノコのような見た目の花が特徴だ。 天草市の下島で花と実の様子を直接観察し、さらに、自動撮影カメラでも計約1900時間撮影して訪れる動物やその行動を調べた。 ■カマドウマのフンから生きたタネ 花を付ける時期には複数種のアリやバッタ目のカマドウマ、ゴキブリの一種などが訪れ、体に花粉をくっつけていることを確認した。また、それぞれの虫を選択的に取り除く実験で、アリ、カマドウマ、ゴキブリそれぞれが花粉を運ぶのに重要な役割を担っていることを明らかにした。 アリとカマドウマは実りの時期にもよく訪れていた。カマドウマは果実や、その近くにある変形した葉を食べ、アリは果実などを切り取って運んでいた。アマクサツチトリモチの果実を食べたカマドウマのフンを調べ、生きたタネが含まれていることも確認した。
朝日新聞社