酸素はどこから生じたのか?先カンブリアの生物が起こした一大ミステリー
Kipp等(2017)は、23.1億年から20.1億年前の間の海環境における酸素濃度の研究を紹介している。一連のデータは呼吸をもとに生を支える多細胞生物の出現が、どうして先カンブリア代の最後期まで待たねば成らなかったのか、その謎にも踏み入っている。(われわれの動物を含む)呼吸を行う生物は、O2を体内にとりいれCO2を排出する。この新たな新陳代謝の仕組みは動物の多様性の鍵と思われる。そのため大気中に酸素が少なかったGOE後の10億年もの長い間、動物グループの出現を妨げていたのだろうか? そしてもう一つ更に興味深い研究がある。1年ほど前に発表されたFrei等の論分は、酸素の大気への放出はGOEよりも早い段階から進んでいた可能性を指摘している。具体的にはなんと38-37億年前という数字が出されている。現在知られている最古の生物化石は37億年前の地層からだ。光合成を行っていたバクテリアの痕跡(ストロマトライト)という点を考慮すると、酸素は一定のレベルでGOEよりかなり古い時代に存在していたのは確かなはずだが、具体的にどれだけの量なのだろうか? 先述したようにほんのわずかの酸素なら、瞬く間に鉄分を含んだ岩石の酸化現象によって、大気から失われてしまう。(しかし私の知る限りこれだけ古い時代の地層から、酸化をおこした岩石はほとんど知られていないはずだが。) この先カンブリア代の大気のガス成分における研究はこれからも「ホット・トピック」として、更に興味味深く研究や新たな発見がなされ続けていくことは間違いないはずだ。(要注目事項として記憶の片隅にとどめておいてもいいかもしれない。)