酸素はどこから生じたのか?先カンブリアの生物が起こした一大ミステリー
2月末、米国航空宇宙局(NASA)が太陽系外に地球によく似た惑星を見つけたことを発表し、地球外生物存在の可能性が話題になりました。実は46億年前に誕生した地球も、生命が約40億年前に生まれ、わたしたちホモ・サピエンスの種がおよそ20万年前に現れるまで、大きく環境を変えてきたことがわかっています。 37億年前-世界最古記録の生物化石「ストロマトライト」の発見(上) 地球の環境はどのような変化をたどり、生き物はどのように対応して進化したのか―。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、地球の酸素放出をテーマに最新研究について報告します。 ----------
地球の大気に存在する酸素の謎
2月22日付け(日本時間で2月23日)にアメリカ航空宇宙局NASAが発表した一大ニュースは、すでに耳にされただろか?(公式のニュースはこちらを参照。)太陽系外に位置する、地球のような「生物が生存できそうな環境」を備えた可能性のある惑星(=Exoplanets)が、なんと7つも発見された。その詳細は研究論文として、学術雑誌NATUREにおいて同日に出版されている(Gillon等 2017)。 Gillon M, Triaud AHMJ, et all. (2017) Seven temperate terrestrial planets around the nearby ultracool dwarf star TRAPPIST-1. Nature 542 (7642):456-460. doi:10.1038/nature21360 何とも興味深い一大発見だ。気温や大気などの推定値によると「液体としての水」が存在する確率も高いとのこと。生物がいたとしてもおかしくない。 この地球という惑星に住む我々は、この広大な宇宙に存在する孤独な住人というわけでは決してないのかもしれない。生物を持つことのできる環境条件をそなえた惑星(Exoplanet)が「他にも多数あるはずだ」と、今回の発見と研究は示しているそうだ。もしかしたら地球外生物の発見は、それほど遠くない将来においてなされるかもしれない。 こうした壮大なスケールの宇宙のかなたにおける大発見を耳にして、(古生物研究者である)私には二つの素朴な疑問が浮かぶ。まず「どのような生物が果たしてすんでいるのだろうか?」 そして「地球以外の惑星において気体としての酸素は存在しているのだろうか?」 一つ目の疑問に答えるには、地球外生物の(存在するという)間接的、および(体の一部など)直接のデータが必要だろう。ハリウッドの映画などに登場する地球外生物のイメージは、今のところ全く創造の域をでていないはずだ。いつの日か人類は直接未知なる生物と、どのような形であれ対面するのだろうか? そして二つ目の大気における酸素の問いかけだが、実は生物の存在が非常に深くかかわってくる。詳細は後述するが、地球においてある特定のタイプの生物の存在なくして、大気中に酸素が放出されることは、今のところまず「ありえない」と考えられているからだ。