MCI(軽度認知障害)は1年で1割が認知症に―移行予防のために知るべきこと、すべきこと
「昔と比べてもの忘れが多い気がする……」そう感じていたら、それはMCI(軽度認知障害)のサインかもしれません。MCIは簡単に言うと「認知症になる一歩手前の状態」のことです。認知症ではありませんが、そのまま放っておくと認知症に移行するリスクがあります。しかし、適切な対策で健常な状態に戻れる可能性があることも分かっています。「知らなかった」で後悔することのないよう、MCIについて知り、認知症予防の対策を始めることが重要です。本記事ではMCIの症状、認知症への移行を防ぐ対策法についてお伝えします。(メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長 内門大丈先生 監修) 【ポイント】気になる物忘れ、ただの「年のせい」じゃないかも
◇MCIとは? 年間5~15%が認知症に移行
MCIとは、本人や家族が感じるほどに認知機能が低下しているものの、基本的な日常生活は問題なく送れている状態を指します。では、認知症とはどのように違うのでしょう。認知症との大きな違いは、「自立した生活が送れているかどうか」という点です。MCIの状態から認知機能がさらに低下し、食事や買い物、金銭管理、服薬など生活に必要なさまざまなことを1人で行うのが難しくなった状態を認知症といいます。MCIから認知症に移行する割合は、1年間で約5~15%であると考えられています。なお、厚生労働省が2022年に行った調査によると、日本では65歳以上の15.5%、人口にすると約560万人がMCIの状態であるとされています。 MCIの主な症状は、記憶力の低下です。通常、年をとるにつれて記憶力をはじめとした認知機能は少しずつ衰えていきますが、MCIでは年相応ではない「もの忘れ」がみられることが特徴です。家事などの日常生活に支障をきたすほどではないものの、昔よりも時間を要してしまったり、間違いが多くなったりすることもあります。また、記憶力の低下はみられず、他の認知機能(遂行、注意、言語、視空間認知)が低下するタイプのMCIもあります。以下のような症状がみられたら、MCIの可能性があるかもしれません。 ものを置いた場所を忘れてしまう 同じ質問や確認を何度も繰り返す 集中力が低下し、注意力が散漫になる 複雑な作業ができない/間違いが多い 計画的に物事を実行するのが難しくなる 趣味や新しいことへの興味がなくなる 家族や友人との会話を楽しめない など