家賃の10倍もう不要? 関西で姿を消しつつある賃貸住宅の「保証金」
賃貸住宅を借りる際の初期費用、といえば敷金と礼金が一般的ですが、関西ではかつて、保証金を採用する物件が多数を占めていました。保証金の金額は家賃の10倍にのぼるケースもあり、借りる側にとって非常に負担の大きいものでした。それが今では、関西でも保証金ではなく礼金・敷金を採用する物件ばかりになっています。保証金は、なぜ姿を消しつつあるのか、不動産業界の関係者に事情を聞きました。
「敷金」「礼金」とは
賃貸住宅を契約する時、借りる側は家主に対して、家賃の滞納や部屋の修繕に備えて担保として預けておく「敷金」と、家主にお礼のお金として渡す「礼金」を支払います。 こうした初期費用のうち、礼金は返ってきませんが、敷金は契約を終えた後に滞納分の家賃や物件の修繕費などを引いた残りのお金が返ってくるのが一般的です。なので家賃をきちんと払い、借りた住居をできるだけきれいに使えば、引かれる金額もより少なくて済みます。
「保証金」とは
「保証金」も、敷金と同じく契約期間中預けておくお金ですが、家賃の1~2か月分程度がせいぜいの敷金よりも高額で、家賃の8~10か月分を求められる場合もありました。 物件の契約を終える時、保証金は返金されますが、その際に物件の修繕費用などの名目で一定割合の金額を差し引かれるのが常でした。 この仕組みを「敷引き」といいます。たとえば、保証金が10か月分、敷引きが5か月分という契約なら、契約終了時に返ってくるお金は5か月分となります。 たとえ家賃滞納がなく、物件の修繕費がほとんど発生しないような場合でも、引かれる金額は同じ。もちろん、家賃の滞納額や修繕費の合計が5か月分を超えるようなら、それ以上差し引かれます。
「君、家賃の10倍の金用意できるんか?」
関西の住宅業界に詳しい住まいる総合研究所の井口克美代表理事によると、保証金は西日本全般に見られる商慣習であり、特に大阪府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県の関西1府4県に多かったそうです。なお、関西のうち京都府だけは、理由は不明ですが敷金・礼金の物件と保証金の物件が入り混じっていたとのことです。 筆者も20数年前、実家を出て大阪府内にアパートを借りようとした時に、職場の先輩から「君、若いから何も知らんと思うけど、アパート借りる時は家賃の10倍くらいの金を用意しとかんとあかんで。そんな金あるんか?」と忠告されたものです。 その時に借りた2DKのアパートは家賃5万5000円、保証金50万円、敷引き30万円という契約でした。先輩の言った通りです。それらを支払い、家財道具をそろえると、なけなしの貯金はほぼ底をついたのを覚えています。大阪ではそれ以降、2軒の物件を渡り歩きましたが、いずれも保証金・敷引きの物件でした。 その後、筆者は十数年前に上京。今年、家庭の事情で大阪に戻ることになったので、賃貸住宅の検索サイトで物件を探したところ、敷金・礼金の物件ばかりで保証金の物件はほとんど見当たらず、驚きました。一体、何が起こったのでしょうか。