家賃の10倍もう不要? 関西で姿を消しつつある賃貸住宅の「保証金」
借り手の力が強くなった
「関西で、保証金の賃貸物件は確実に減っています」と話すのは、不動産情報サイト「SUUMO」を運営するリクルート住まいカンパニーで関西賃貸営業部部長を務める伊藤慧(けい)さん。 「大阪府を例にあげると、20年前は府内でも豊中市や茨木市といった入居率の高い地域では、家賃の10倍の保証金が必要な物件が数多くありました。当時はそれでも住みたがる人が多く、オーナーは強気でした」 その後、保証金物件が減少した原因について、伊藤さんは「空き家の賃貸物件の割合が増えて、借り手の力が強くなりました」として「借り手優位」になったことが一因と分析します。 「取り壊される物件もあるので、新築着工数イコール純粋な物件数増加ではありませんが、相続税対策が賃貸物件の着工数を加速させており、物件は増加しています。また、関西では人口がゆるやかに減りつつあります。この物件増と人口減によって、空き家が増えていると思われます」
敷引き無効判決も補償金物件減少に影響?
不動産仲介大手エイブルの企画開発事業本部で西日本コンサルティング事業部部長を務める菱矢輝美雄(ひしやきみお)さんは、賃貸住宅の敷引きが無効と判断された2005年7月14日の神戸地裁判決など、保証金や敷引きを巡る訴訟も保証金物件の減少に影響を与えたと考えています。 神戸地裁判決の裁判は、敷引きが消費者の利益を一方的に害するもので、消費者保護法に基づき無効だとして、物件の借り手だった原告が貸主に対して敷引きで引かれたお金の返還を求めていたもの。神戸地裁は、敷引金の負担に正当な理由は見いだせず、一方的で不合理な負担を強いているとして、原告の訴えを認める判決を下しました。 当時、大阪市内にあるエイブル店舗の店長だった菱矢さんは、「この判決が出た時、『これはえらいことや、保証金という商慣習を揺るがすことになる』と驚きました。この判決の後から、保証金の金額が下がり始めたように思います」と振り返ります。その後、保証金を採用する物件自体も減少し、菱矢さんの体感では、ここ数年で保証金の物件がほとんどなくなったといいます。