新NISA、相場がめちゃくちゃ下がっても「喜べる」秘密とは?「オルカン一択」にしない利点を元ファンドマネジャーがそっと解説
「不動産を資産に組み込む」とはどのようなことなのか?「自宅も資産に入るんですか?」
ここまで、日本株と債券(預金)、海外資産を中心にAAのご説明をしてきました。ここで不動産について考えたいと思います。 結婚して子どもができたらマイホーム、というのはもう古いでしょうか。でも住宅ローンを組んでマンションを買うのを目標に貯金してらっしゃる方も多いと思います。 今は金利が低いうえに所得控除もあって、住宅ローンの残高がある方も多いと思います。分譲マンションはスペックも高く、新築だと間取りも選びやすいですね。一方で賃貸はライフイベント発生時のモビリティやコストが低いことが利点です。 投資の視点からすると、持ち家か賃貸かはどちらも似たようなものです。現在はたまたまマンション価格が上昇していますが、長い目で見れば耐久性の低下や維持にかかるコスト(修繕や管理費、固定資産税など)、社会的減損(スペックが新築に劣るなど)で、中古マンション価格は下落してゆくのが普通だと思います。 田舎の戸建てに比べれば資産価値も多少は高いと思いますが、持ち家と賃貸の間には裁定が働いており、純粋な投資の観点からするとどちらも似たようなリターンになると考えています。
純粋に投資の視点でだけ考えると、住宅ローンはそれそのものが結構なリスクです
しかし、資産運用の観点からすると大きな違いが発生します。それはマンション購入時のローンの存在です。 5000万円のマンションをフルローンで購入した場合、その時点でのバランスシートは不動産5000万円と借入5000万円で、純資産はゼロです。当然ですね、お金を返していくわけですから。 前述のとおり現在住宅ローン金利はほぼゼロですので、返済時の金利負担もあまり気にならないかもしれません。某ネット銀行のシミュレーションでは、35年5000万元利均等返済変動金利0.319%の月額返済額は12万6000円程度とあります。だったら今の家賃より安いし第一新築だし、と思いがちですが、金利が1%上がると返済額は月額14万9000円、2%上がると17万4000円にまで増加します。月額でも結構な額ですが、最終返済までの返済額の総額でみると、それぞれ1000万円ずつ増えているのです。なんと、金利が2%上がるだけで老後に必要だと言われている2000万円がすべて飛んでしまいます。 金利リスクだけではありません。なるべく長く、リスクをコントロールした運用をするのが資産運用の基本である、と説明してきましたが、住宅ローンを抱えることで返済期間中は資産運用に回すお金が減少します。しかもバランスシートはほぼマンション、長期AAに向けてリバランスをして、と説明してきましたが、ローンを組んでマンションを買うのはある意味その対極にあります。 住宅ローンというレバレッジを使って、マンションに全額投資とは、どんなにリスクレベルが高いヘッジファンドでも取らないハイリスクな投資戦略です。資産運用の観点からは賃貸派が圧勝ですね。なかなかそういう方はお見掛けしませんが、値上がりしたマンションを売却して、長期AAに基づいたポートフォリオで運用しながら賃貸住宅に住む、そんな考え方もアリだと思います。 金利という時間のコストを支払って未来の商品を手に入れるという意味で、住宅ローンなどのレバレッジはタイムマシーンのようなものです。今は無視できるような金利ですが、時間のコストが今以上に下がることは想像できません。昔のコマーシャルにありました、「よーくかんがえよう、お金は大事だよ」「ご利用は計画的に」。