裏金質問はNG…知事は指示否定、責任は? 規制でないと強弁から一転謝罪、記者が見た山梨県の「ドタバタ劇」
小林氏は知事政策補佐官や知事政策局次長、秘書課長も兼ねており、長崎知事をかばう姿勢をにじませた。イメージ悪化から早期幕引きを図る狙いがあったとみられる。 3月22日の知事定例会見。長崎氏はインタビュー実施に当たり「県政運営を中心に発信したい」との趣旨を担当者に伝達したと明らかにした。理由はこれまでの会見で政治資金関連の質問が集中しているからだとした。自身の発言が指示と受け取られ、質問規制につながった―。担当者が忖度したとの見方を記者から問われ「あるのかもしれない。その点は反省している」と述べた。一方、自身の指示は頑なに認めなかった。 ▽有識者「不適切な対応は徹底抗議せよ」 一連の山梨県の対応について、専修大の山田健太教授(言論法)は「国民の知る権利を阻害し、決して許されない」と糾弾する。行政機関が不都合な質問を拒んだり、特定のメディアの取材を受けなかったりして、報道をコントロールしようとする行為に警鐘を鳴らす。
同時に「新型コロナウイルス禍の影響で、取材される側が1社1人、1問までといった制限を設け、取材する側も慣れてしまった側面が否めない」とも指摘。報道機関の役割は権力監視だとした上で「不適切な対応が見られれば、徹底して抗議し、権力側の姿勢を正すべきだ」と訴える。 ▽トップの責任、曖昧なまま釈然とせず 2通の回答文書を見て気になったのは、長崎知事に回答を求めていたのに、いずれも長崎氏の名前がなかった点だ。山梨県トップとしての責任をどう考えているのか。3月22日の会見で問うと「メディアの皆さんと意思の齟齬ができたのは大変残念。今後こういうことがないようコミュニケーションを密にする」などとして、正面からの回答を避けた。質問封じ問題は収束に向かっているよう見える中、肝心な部分は曖昧なままで釈然としない。 ある山梨県職員は「誰でもハレーションは予想できるはずだ。組織で不祥事が起きれば、トップが自身の責任を説明して謝罪するのが筋だ。県庁も例外ではない」と断言。自身の関与を否定し続ける長崎氏の姿勢に、疑問を投げかけた。
今回の一件を通じ、記者が取材先の対応を問題視し、声を上げる重要性を改めて実感した。取材先に報道機関をコントロールできると思わせないよう、身を引き締めなければならないとも思った。二度と質問封じが起きないよう、引き続き取材を進めたい。