裏金質問はNG…知事は指示否定、責任は? 規制でないと強弁から一転謝罪、記者が見た山梨県の「ドタバタ劇」
取材前日の2月1日、県の担当者から突然、取材延期と方式変更の連絡が届く。2日予定のグループインタビューを取りやめ、新聞・通信各社のインタビューも個別方式に変更するとの内容だ。当然「複数の記者から不記載問題を矢継ぎ早に質問され、集中砲火を浴びるのを避けるためでは」との見方が広がる。担当者は変更理由について「知事の公務のため」としか答えなかった。 2月2日、担当者から直接電話がかかってくる。事前に伝えた質問項目に対する要請だ。「インタビューで政治資金の不記載問題を質問するか」「インタビューでなく、会見で聞いてくれないか」「会見で答えている以上の回答はないと思うが…」 これまで閣僚や首長ら政治家を取材してきた経験でも、不利益を被るような質問は受け付けないと言われたのは初めてだった。驚き呆れながらも、要請に応じられない旨を伝えた。担当者も譲らず、押し問答が続いた。簡単に引き下がれないよほどの事情があるのかと感じた。
共同通信のインタビューが行われた2月5日。いざ不記載問題を切り出すと、長崎氏は「説明責任を果たしている。別に法的に問題ない」などと語り、自身の対応は適切だったとの考えを示した。 なお、担当者からは1月11日までに質問項目を出すよう求められていた。インタビュー取材は、限られた時間を有効に使う必要がある。取材を受ける側は根拠となる法律や条例、予算額など細かい数字を示す場面も多い。 事実関係を間違わず円滑に進められるよう準備してもらうため、質問項目を前もって通知することがある。もちろん必要に応じ、事前に伝えていない質問をぶつける場面も少なくない。 ▽日々強まる「圧力」、テレビ局が取材拒否される事態に こうした要請を受けたのは共同通信だけでない。インタビュー希望の12社中、9社が質問を扱わないよう何らかの形で伝えられていた。うち2社は「不記載問題を聞くなら、インタビューに応じるのは難しい」と迫られ、地元民放のテレビ山梨は取材自体を拒否される事態に至る。複数社が不記載問題をただしたものの、やむなく紙面掲載を見送った社もあった。