「おなかにやさしい」が売り 高付加価値のA2牛乳 取り扱い店舗急増 需要拡大に期待
飲んでもおなかがゴロゴロしない「A2牛乳」が注目されている。一般的な牛乳と比べて価格は高めだが、おなかが緩むので敬遠していたという人らから「飲めるようになった」と喜びの声が上がっている。北海道富良野市に事務局を置く日本A2ミルク協会の藤井雄一郎代表理事(46)は「輸入飼料価格の高騰や消費低迷など経営が厳しい酪農分野で新たな高付加価値商品となる可能性がある」と期待を寄せる。 【写真】「飼養方法は一般的な乳牛と同じです」と話す藤井さん ■商品化まで10年 初冬を迎えた北海道富良野市。山あいの道を車で進むとチーズ工房などを併設した藤井牧場が見えてきた。120年前の明治37(1904)年、北海道開拓の初めに入植した歴史を持ち、現在は約2000頭の乳牛を飼養する巨大牧場だ。その事務所内に日本A2ミルク協会の事務局がある。 協会代表理事を務める藤井さんがA2牛乳の存在を知ったのは平成21年ごろ。知人から「ニュージーランドで新しい牛乳が売れているらしい」と聞き、それがA2牛乳だった。欧米などではすでに高付加価値化された牛乳として認知されていたといい、「強い関心があり、勉強を始めた」と振り返る。 藤井さんによると、牛乳に含まれるタンパク質のひとつのベータカゼインには「A1型」と「A2型」の2種類がある。A1型の遺伝子を持つ牛からはA1型の牛乳、同様にA2型の牛からはA2型の牛乳が生産される。A2型のベータカゼインはおなかが緩む原因物質の一つと考えられる「BCM7」をほとんど生成しない特徴があるといい、「今まで飲めなかった人がA2牛乳なら飲めるようになったり、胃腸症状が緩和されたりするケースがある」という。 店頭などで見かける牛乳はほぼA1型とA2型が混合している。生産段階で牛をA1型とA2型に分けていないことや、牧場から出荷された牛乳が乳業メーカーの巨大タンクに混ざった状態で集められて製品化されることが背景にあるからだ。 A2牛乳に着目した藤井さんだが、商品化するまでには約10年かかっている。当時飼養していた牛は約600頭でこのうちA2型は3割。「子牛から大切に育て、牛乳を生産できるようになるまでには数年かかる。そのサイクルの中で1頭ずつ検査をしてA2型の遺伝子を持つ牛を人工授精で増やした。完全移行するにはそれだけの時間が必要だった」という。 ■飲めなかった層に照準