「おなかにやさしい」が売り 高付加価値のA2牛乳 取り扱い店舗急増 需要拡大に期待
A2牛乳づくりは生産段階だけでは終わらない。集乳や製品化までの工程は一般的にはすべてA1型とA2型が混合された状態で行われており、A2牛乳だけを扱う新たなルートをつくるのはハードルが高いという現実がある。
現時点では独自の流通・製造ルートが必要。藤井さんの場合、ミルクローリーで北陸の乳業メーカーに輸送し、パック詰めをしてもらった後、全国各地の量販店などに出荷している。北海道でも取引しているスーパーなどがあるものの、いったんは道外に輸送せざるを得ない状況だ。
業界は今、人口減少などで牛乳消費が低迷。円安やロシアのウクライナ侵略の影響で配合飼料価格が高止まりしていて牧場経営はかつてないほど厳しい。その渦中にあって、藤井さんは「飲用牛乳の市場は売上高ベースで年間約10億円といわれる。A2牛乳で〝牛乳が飲めない〟層を掘り起こすことができれば新たな需要となり、高付加価値化による消費拡大が期待できるし、酪農経営の改善にもつながる」と話す。
■推定100牧場が取り組み
藤井さんは令和2年に協会を立ち上げて代表理事に就任。A2牛乳の生産に取り組んでいる牧場は全国で推定100カ所に上り、日本A2ミルク協会には約20牧場が加盟しているが、このうち生産、輸送、加工まで一貫した高い水準を確保したと協会が認める認証牧場はまだ藤井牧場など2牧場にとどまる。認証牧場以外のところでA2牛乳として販売している多くは、牧場に自ら加工場、レストランを併設しているケースとみられる。
認証牧場による「日本A2牛乳」は今年3月に販売開始し、取り扱い店舗は1年足らずで全国1200店に増えた。1リットル1本あたりの希望小売価格は税抜き360円とやや高めだが、消費者の関心を追い風に納品依頼は増えているという。
藤井さんは「関心を持ってもらえるのは本当にうれしい」と喜びを語る一方、供給や物流体制などの課題を挙げて「一過性の人気ではなく、地道に売れ行きが伸びる存在になってほしい」と話している。(坂本隆浩)