夜中のトイレがつらい…泌尿器専門医が教える今すぐできる夜間頻尿対策
夜中、就寝後にトイレに行く「夜間頻尿」。国立長寿医療研究センター・NILS-LSA第5次調査によると、男性で夜間頻尿があると回答した人は60歳代で約80%、70歳代で90%、80歳以上で100%。女性も同様に加齢とともに人数が多くなっており、60歳代で70%、70歳代で80%、80歳以上で90%弱が「ある」と答えている。睡眠の質を低下させる夜間頻尿、どうすれば改善する? 夜トイレに行きたくなるのは病気の疑い…薬が必要な場合も 「夜間頻尿はコントロールできます」と言うのは、大阪・高槻の「さいとう内科クリニック」院長で、泌尿器・腎臓の専門医である齊藤純医師。「夜間頻尿は老化現象でもあるのでゼロにはできないかもしれません。しかし回数や頻度を減らせ、それで生活が楽になったという人はたくさんいます」と続ける。 足のむくみやちょっと動いただけでの息切れ、急激な排尿回数の増加などがなければ、まずは日中、次のことを試してみるといい。 「尿意を感じてもすぐトイレに行くのではなく、10~15分ほど我慢する。就寝前の2~3時間は水分量を控え、飲むとしてもコップ1杯程度にする。アルコール量を少し控え、お腹を冷やさないようにする」 1カ月程度続けても夜間頻尿が改善しなければ、泌尿器科を受診しよう。老化に加えて、慢性腎臓病や心機能低下といった内科的疾患、過活動膀胱、男性では前立腺肥大など何らかの病気があるかもしれないからだ。 過活動膀胱は日本排尿機能学会が今年「推計患者数1250万人、20歳以上で11.9%」と発表しており、老化と関係なく起こるメジャーな病気。腎不全や心不全は軽度でも頻尿が見られ、夜間頻尿による受診が慢性腎不全や心臓の機能低下の早期治療につながる可能性がある。また、前立腺肥大は50歳以上の男性ではだれでも発症するリスクがあり、5人に1人が該当するといわれている。 「何らかの病気があれば、それらの治療で夜間頻尿の改善が見られます。たとえ病気がなくても、夜間の尿量を少なくする薬もありますし、睡眠導入剤で睡眠の質を高めることで夜間頻尿の回数を減らすなど、治療選択肢が複数あります」 ■尿量は少ないのに我慢できない 痛みや恥ずかしさを伴う検査が行われるのでは、と泌尿器科を受診するのを躊躇している人もいるだろう。 夜間頻尿の場合、初診では問診や「過活動膀胱症状スコア(OABSS)」といった質問用紙で症状を把握し、尿検査、血液検査、超音波検査などを行う。痛みや恥ずかしさはほとんどない検査だ。 「夜間頻尿は、尿量が多いのか、尿量は少ないが膀胱に十分量をためられないために尿意を感じているのか、尿を出しきれておらず(残尿)、そこに新たに尿量が加わるために頻尿になっているのかで、治療や対策が異なります。これらは問診では正確に把握できないこともあり、数日間の尿量や排尿状況をチェックするための排尿日誌を書いてもらうケースがあります。残尿の有無は超音波で調べますし、最近はお腹に装置を当てるだけでOKの機械もありますので、心身の負担はないと考えられます」 寒い季節は膀胱の筋肉の収縮などで頻尿になりやすい。夜中にトイレで起きるのは年だから仕方ない、と諦めないことだ。 ■前立腺肥大との関係 中高年男性は、夜間頻尿の原因に前立腺肥大がある場合が珍しくない。 「前立腺肥大は加齢で尿道が狭くなる病気です。この場合、膀胱の収縮力を弱める抗コリン作用の成分を含む薬を服用すると、尿道が閉塞して尿が出にくくなる尿閉のリスクがあります」 すでに前立腺肥大と診断されている人は、主治医が薬の調整をしており、また折に触れて注意を促しているはず。問題は未診断の人だ。 「抗コリン作用の成分は風邪薬や抗ヒスタミン薬など市販薬にも広く使われていて、知らずに服用してしまいがち。自己判断で使うのは危険です」 それを回避するためにも、夜間頻尿が続くなら、原因が何かを探る必要がある。 ■NG行為 夜間頻尿があり、かつ前立腺肥大と診断を受け治療を受けている人のよくあるNG行為に「α1遮断薬を自己判断でやめてしまう」がある。 「膀胱を緩めて尿を出しやすくする作用があるため、『夜間頻尿があるから飲まない方がいい』と考えてしまうようですが、例えば併せて抗コリン薬が処方されている場合、その効果が強く出過ぎて、尿閉を起こすリスクがあります」