鉄道3社が乗り入れ・乗降客は1日11万人超、なのに「飲食店や物販が少ない」…市が駅周辺活性化へ
鉄道3社が乗り入れ、利用者の多い中百舌鳥(なかもず)駅周辺(堺市北区)を活性化しようと、堺市は基本方針を策定した。乗り換えの際などに、駅利用者が時間を過ごせる場所を作るといった、市が目指す地域の具体的なイメージを示して、民間からの投資を呼び込む狙いがある。今年度中に施設整備に向けた事業者の公募も始める予定だ。(松本慎平)
市の北部に位置する中百舌鳥地区にある、大阪メトロ御堂筋線の始発駅・なかもず駅はミナミやキタ、新大阪につながり、2022年度で1日あたり6万3852人が利用する主要駅の一つだ。また難波駅と連絡する南海電鉄高野線の中百舌鳥駅には、泉北ニュータウンや和泉市とを結ぶ泉北高速鉄道も乗り入れている。3社の合計乗降客数は延べ同11万6894人に上り、大阪市以南では最も多くの人が鉄道を利用するエリアとなっている。 1987年の御堂筋線なかもず駅開業後、90年代前半にかけては「そごう」と「西武百貨店」の百貨店2社が駅前への出店争いを繰り広げたが、バブル崩壊による景気後退でいずれも実現しなかった。
駅周辺には、多くの人が行き交うエリアでありながら、利用が十分でない土地もあることから、市は活性化を目指す。二つの駅が交差する部分の北側にある「駅前広場エリア」と、そのさらに北に広がる「北部エリア」などを対象とする。 市が2022年に行った市政アンケート(466人が回答)で、駅前北側広場について「訪れたことがある」と答えたのは65%、303人で、このうち38・6%、117人が課題に挙げたのが「飲食店や物販などの商業施設が少ない」だった。よりにぎわう場所とするために求める機能について、複数回答で「商業施設」が179人、「飲食施設」161人、芝生広場など「集い・憩える空間」90人と続いた。
このため、基本方針で活性化の基本理念として「交流・活動が生まれるひと中心のエリアを形成」を掲げ、駅前北側広場には「多様な人が交流する空間」や「商業・業務機能がある空間」などがある将来像を描く。 「北部エリア」には、駐車場や調整池(5400平方メートル)など利用の進んでいない土地があり、「多様な人が新しいことに、出会い、チャレンジできる拠点の形成」を目標とする。
両駅の北約400メートルに堺商工会議所など産業支援機関があり、南約900メートルには大阪公立大中百舌鳥キャンパスがあるなど、産学官の連携につながる環境も整っている。永藤英機市長は「これまで様々な計画や構想が実らずに来ているが、この好立地を生かさない手はない」と話し、活性化への意欲を示している。