【野球浪漫2024】ロッテ・国吉佑樹 逆境を知る「いろいろな人が僕のピッチングを見てくれている。本当に幸せ」
「主に先発が早い回に降板したときに試合を立て直す役割を担っていた」と振り返る。決して本人も満足いく成績ではなかった中でこのトレードは気持ちを一新する良い機会と捉えることができた。そしてマリーンズに縁を感じることもあった。 トレードが発表になったときにすぐに連絡をくれたのは、ベイスターズとマリーンズの両方に在籍をしていたことのある元チームメートの2人の外国人選手。一人は20年までマリーンズに在籍していたチェン・グァンユウ投手。そしてもう一人は19年にマリーンズにいたブランドン・マン投手だ。 「2人とも投手で、ファーム時代に同じ時間を過ごすことが多かったということもあり、いつの間にか、よく話す仲になっていました。ブランドンとは家に遊びに行ったり、自分が横浜の街を紹介したりするなど、球場以外のプライベートでも一緒に過ごしました。日本語を勉強したり、平仮名を使ったりするなど、すごく前向きで積極的な性格で、そういう性格だから誰とでも仲良くなれるのだと思います」と国吉は懐かしそうに話す。 チェンがベイスターズでチームメートだったのは11年から14年。ブランドンが11年と12年の2年間。2人とはその後も交流を続けた。マリーンズ入りが決まるとまるで自分たちがチームメートとして迎え入れるかのように喜び、連絡をくれた。国吉と2人がいかに強い友情でつながっていたかが分かる。
連続試合無失点の記録
不思議に思うこともあった。この年の交流戦で国吉はマリーンズ相手に交流戦2試合に登板し、いずれも打たれているということだった。 「たしかレアード、レオネス・マーティンに打たれて、都志也(佐藤都志也)にも打たれた。とにかく打たれた記憶」と言う。横浜スタジアムでの6月4日、初戦は1回1/3を投げて2安打、2失点で負け投手。翌5日も1回を投げて2安打、3失点していた。それでもトレード後、初めてマリーンズの本拠地ZOZOマリンスタジアムに足を運ぶと「勝ちパターンで使う。その気持ちで準備をしてほしい」と球団からハッキリと明言された。風の強いマリーンズの本拠地ZOZOマリンスタジアムでは特に高い角度から繰り出されるストレートは威力を発揮すると高く評価されての移籍。このシーズン、満足いく成績を出すことができていたとは言えない中で注目をしてもらい、いきなり勝ちパターンを任されるほどの期待をかけてもらえたことに驚き、意気に感じた。 「7回の勝ちパターンでと言ってくれたことで役割が自分の中で明確になった。これまでは先発が崩れたときとか、どこで投げるか試合展開次第で分からなかった。勝ちパターンで投げる機会もなかなかなかった。それだけにありがたい気持ちだったし、やりがいを感じた。トレードに関してネガティブな気持ちはもともとなかった」と国吉。 移籍後初登板は後半戦2試合目となった8月14日のバファローズ戦(ZOZOマリン)、2点リードの7回。1回を1奪三振、無失点。チームの後半戦初勝利を呼び込む好投だった。試合後、少しホッとした表情を見せながらも「澤村(澤村拓一)さんがジャイアンツからトレード移籍して初登板したときのように、3者三振とはなりませんでしたね」と、おどけて見せた。 8月21日のホークス戦(PayPayドーム)では最後を任された。マリーンズの絶対的な守護神の益田直也が3連投をしていたことから回ってきた出番だった。 「試合前から言われていたので心の準備はできていました。最終回はやはり独特の雰囲気がある。ただ気負うことなく普段どおりに投げようと考えました」(国吉) いつもどおり、ブルペンでは15球から20球を投げ、マウンドへ。1点こそ失ったが、後続を抑え勝利。ベイスターズ時代の15年5月24日、横浜スタジアムでのタイガース戦以来2281日ぶりのセーブを挙げた。