【ABC特集】広大なお屋敷が「0円物件」に 「売るに売れない」”負”動産に所有者「タダでも買って欲しい」 急増する相続放棄に意外な落とし穴も
奈良市にある207坪の土地に建てられた築49年の一軒家。この家の所有者、岩野努さん(88)はこう話します。「タダでも買って欲しい」。 (岩野さん) 「この年ですからお金がどうのこうの言う気はありませんし、こんなところに住んでいただける方がいるんだったらタダでもいいやと思ったんです」 おととし、長年連れ添った奥さんが亡くなりました。子どもがいなかった岩野さんは、免許返納を機に市街地のマンションに引っ越し。いまは空き家です。 木造瓦ぶきで平屋建ての広々とした家。JR平城山駅から歩いて約10分ほどの場所です。なぜ、この物件を「タダ」なんでしょうか? (岩野さん) 「これを取り壊して再築ということになると、建物を建ててもいいという許可証を持ってないといかんわけです。ところが紛失したんですよ。壊さずに改築ということなら許可いりませんからね。建物の改築はできると思います」 実はこの場所は市街化調整区域で、許可なく建物を建てられない場所なんです。岩野さんは許可を得て家を建てたそうですが、許可書を紛失。増改築はできますが、新しい家は建てられません。 毎年、固定資産税がかかる上、このままだと親族に迷惑をかかるので、0円でいいから手放したいといいます。
実は「遺産を受け継がない相続放棄」が年々増加しています。去年、全国の家庭裁判所に申し立てられた相続放棄は過去最多の28万2785件ありました。相続放棄が増えている理由のひとつが、岩野さんが所有しているような「売るに売れない」不動産ならぬ”負”動産なんです。
岩野さんのように、物件を無償譲渡したい人のためのインターネットサイトがあります。それが「みんなの0円物件」です。物件譲渡の際、サイトに手続きを依頼すると16万5000円かかりますが、すべて自分でやると手数料は無料です。 2019年には年間50件ほどだった掲載希望が、先月はひと月で200件もあったといいます。いかに”負”動産を抱えている人が多いのかがうかがえます。
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