【ABC特集】「物が欲しくて盗んでいる訳ではないのに、何がしたいんだろう」 通算2000日以上を刑務所で過ごした「窃盗症(クレプトマニア)」の女性が再び万引き 抑えられない「衝動」の正体とは
「盗りたいと思わないのに、万引きをしてしまう」。窃盗の強い衝動を抑えられない精神疾患「窃盗症」(クレプトマニア)と診断される人たちがいます。万引きで前科5犯、これまで3度入った刑務所で通算2000日以上を過ごした女性の、新たな事件を追いました。
■夫にも話していなかった窃盗事件での起訴
「特別送達とかいって来たんですけど」 大阪市内で夫と二人暮らしの50代の主婦・山田貴美子さん(仮名)のもとに、一通の封書が届いたのは去年12月のことです。差出人は大阪地裁。「公判期日召喚状」と書かれた書面は、山田さんの刑事裁判の初公判日を知らせるものでした。夫には起訴されたことも伝えられておらず、この書面も慌てて隠してしまいました。 (山田さん) 「こんなん見て、寝られるわけもなく・・・」
山田さんが問われているのは、去年7月、大阪市内の百貨店で販売価格約14万円のブレスレット1個を万引きした罪。万引きして8日後、盗品を返却しようと再び店を訪れたところで店員に呼び止められ、駆けつけてきた警察官に逮捕されました。 (山田さん) 「1日留置場でお世話になってて、夫に迎えに来てもらったとき『お前にいつも迷惑かけられるし』って。ごめんなさいって。『お医者さんから言われてることはみんなしてるよ』って言いました」
■「窃盗症(クレプトマニア)」と呼ばれる精神疾患で通院・・・しかし再犯
刑事裁判記録などから、山田さんは20年あまりの間に、いずれも万引きで5回の裁判を受けていたことがわかります。執行猶予中の万引きも目立ちます。「自分は何かの病気かもしれない」。そう気づいたきっかけは最後に入所した刑務所での出来事だったと話します。 (山田さん) 「刑務所にすごく理解のある看護師さんがいて。『あんたね、それは病気やから。変われるかもしれへんし、一度病院に行ってみなさい』って」 出所した山田さんがたどり着いたのは、「窃盗症」(クレプトマニア)と呼ばれる精神疾患の治療に特化した、ある精神科クリニックでした。「何度も裁判を受けているのに、クレプトマニアとかいう認識、そういう病気があるってわからなかったです」。 まじめに通院治療を続けた山田さん。しかし、クリニックの移転や心労が重なり、徐々に足は遠のきました。そんなとき、前述の「ブレスレット万引き事件」を起こしてしまったのでした。最後の犯罪から4年4ヶ月が経ってからの再犯でした。
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