「7割がジェネリックに」 年間47兆円の医療費削減がわれわれに及ぼす影響とは
2022年度に過去最高の46.6兆円を記録した国民医療費を削減するための施策の影が日々の生活にひたひたと忍び寄ってきていることにお気付きだろうか。ジェネリック薬と「高額療養費制度」。いつから何が変わり、どんな影響があるのか。決定版の完全解説。 【写真を見る】高額医療費と国民医療費の伸び ***
日常的に病院や薬局に通っている方は約2カ月前にはその“変化”に直面していたはずである。しかし最近になって薬局を訪れ、窓口で驚いたという方も多いのではないか。 「ジェネリック医薬品(後発医薬品)ではなく先発薬を選ぶと特別に料金がかかりますがよろしいですか?」 10月1日以降、病院で出された処方箋を手に薬局を訪れると、窓口でそう声をかけられることがある。 「後発薬の発売から5年たつなど一定の基準を満たす先発薬を希望する場合、後発薬との差額の4分の1が保険適用されず、『特別の料金』として自費で払わなければならなくなったのです」(厚労省担当記者) 例えば1錠100円の先発薬と同60円の後発薬がある場合、差額40円の4分の1である10円が、通常の1~3割の患者負担とは別に自費で払わなければならない「特別の料金」となる。
「特別の料金」
薬剤師の堀正隆氏が言う。 「先発の内服薬を処方されている患者様はこの10月を機に、7割方がジェネリックに変更しました。精神科領域では変更しなかった方が多かったです。精神薬の効果は主観によるところもあるので、変えたくないという方もいるのです」 当然ながら処方される“薬”の種類によって「特別の料金」は変わってくる。 「内服薬は1日当たりの計算になります。1日当たりの『特別の料金』が10円だとすると月額約300円に消費税が加わり約330円が発生する。一方、湿布などの外用剤は1調剤当たりの点数になるので、料金の差が出にくい。『特別の料金』が数十円であれば、湿布の布の材質が変わるのは嫌だから変えないままにしよう、という方も多いです」(同) 抗がん剤などで高額な「特別の料金」が発生するケースもあるという。 「抗がん剤の内服薬の処方で、約3カ月で11万円ほどの『特別の料金』が出たという方がいました」 と、堀氏は続ける。 「先発薬が1錠当たり約1640円で、ジェネリック薬で一番高いものが約540円。その方は1日4錠飲まなければならず、1日当たりの差額は4400円。『特別の料金』はその4分の1の1100円ほどで、90日分で消費税が加わって約11万円となる。その方は10年以上先発薬を飲み続けていましたが、すぐに変えるということになりました」 医療法人社団双壽會秋津医院の秋津壽男院長が言う。 「先発薬の『特別の料金』徴収についてはアナウンスがあまりされていなかったので、戸惑っている人は多いですね。どうして前と同じ薬ではダメなんですか? と聞いてくる患者さんも結構いらっしゃいます」 追加料金を支払えば先発薬のままでも大丈夫だと説明すると、 「お金を出すくらいだったらジェネリックにしますという人が多いですね。ジェネリックを拒否する人の中には、1回ジェネリックにすると先発薬に戻せないと思い込んでいる人もいるのですが、戻すことも可能なので、まずは1回、1カ月だけでもジェネリックを試してみてほしいです。何しろ国の方針ですので。試してみて違和感があるようでしたら、戻したらいいと思います」(同)