「つらいかな」と思ったら、心のサイン。仕事、家事、育児、介護……心の専門家に聞く、バーンアウトを防ぐ方法
転機を経て変わった考え
Tomy先生は、喪失感や焦燥感と、どう区切りをつけてきたのでしょうか。 Tomy「最初はもう、うつ病になるぐらいつらかった。でも、あるとき気づいたんです。死への恐怖を引きずり続けると、観覧車の後半を楽しめないということに。 そして、『亡くなった人にお土産を持って会いに行くぐらいの感覚でいれば、死ぬことは怖くない。お土産を持って行く以上は、今を十分生きよう』。 そう思えるようになったんです。すると、漠然とした不安感や恐怖感が減ってきて、今しかない時間を楽しめるようになってきました。 ここまで達観するのはなかなか難しいと思いますが、一つ言えるのは、『今日一日を大事にしよう』という考え方の尊さ。 誰にだって、今日一日の午前、午後の観覧車は来る。その積み重ねで毎日が構成されている。大変な日でも、ちょっと幸せな瞬間があれば、いい日だと思えませんか?
そうやって、一日を楽しむようにしていれば、万一何かが起きても、受け入れられるだろう──。そう脳内シミュレーションすれば、日々のことがそんなに苦痛じゃなくなってくる気がします」 この考えに到達するまで、どのくらいかかるのか……。 先生は、「人それぞれで、下手したら10年かかる人もいるかもしれない。でも、いつか吹っ切れるタイミングは来る」と力強く話し、こう加えました。 「誰もが、やがて執着を手放して楽になる。人間そういうふうにできていると思います」
バーンアウトしない方法
40代以降、焦りや喪失感、人間関係のつらいことなどを抱え込み過ぎた結果、ある日突然、燃え尽きてしまう──いわゆる「バーンアウト」する人もいます。 「抱え込みやすい人は、努力型が多い。また、仕事を必要以上に抱え込んでしまうタイプも。『自分がやったほうが早い』『人に頼むのが面倒』と思う人がその典型例ですね」
大野先生がこう言うと、我がことだとハッとした表情の参加者がちらほら……。 大野「確かに、人に頼むと思い通りにならないことが出てきますよね。私も結構抱えちゃうほうなので、分かりますよ。でもね、それでも、頼む・手放す・相手に任せることを積極的にやっていったほうがいい。 こだわりとか価値観を持っていることは素晴らしい。でも、こだわりを緩和させることも必要なんですよ。 私、若いとき、カット野菜を買えなかったんです。洗う過程で水溶性の栄養素が流れているんじゃないかと心配で。でも今はもう、普通にカット野菜を使っています。カットしていられないくらい忙しくなってしまって。 どこかで限界が来ると、もうどうでもよくなるんですよね」