「ひとりでも産みます」ーー子宮頸がんを経験した女性が授かった命と育てる決意 #ydocs
ワンルームでのワンオペ育児
かつては昼も夜も逞しく稼ぐサキさんだったが、現在はカフェ1本に絞っている。「子供と過ごす時間を確保して、育児を疎かにしたくない」からだ。幸いにもカフェはコロナ禍を乗り切り、黒字の月も増え、貯金もできるようになった。 午前7時に起きると、子供にご飯を食べさせる。「納豆ご飯が大好きで、そればかり。偏りがちなのが気になる」という。 保育所に送るのは午前9時ごろで、その後にカフェを開店させる。忙しく働いていると、あっという間に夕方だ。午後6時までには迎えに行かなければならない。 買い物をして帰宅し、夕食を食べさせる。お風呂に入れ終えると午後8時を回っている。寝かしつけに時間がかかるのが悩みで、いったん部屋を暗くして、ようやく寝息を立てるのは午後9時過ぎ。七畳ワンルームが真っ暗になるので、この間、他のことは何もできない。 その後も、起こさないようにキッチンの電球だけを灯し、朝食や夕食用の作り置きのおかずを作る。薄暗い中、大きな音を立てないようにしながらの作業は、思っていた以上に時間がかかってしまう。 午後11時ごろに、ようやく自分の夕食。節約の為に買いだめしたインスタントラーメンを静かにすすってようやく1日が終わる。 しかし子供が順調に成長し、元気に歩き回るようになってくると、家の狭さが気になってきた。今年こそ引っ越しをしたいと考えている。希望するのは区が設ける“子育て住宅”。そこに移り住めれば、今よりも広々として生活しやすくなるはずだ。
母子2人だからこその未来
この春、男の子は2歳の誕生日を迎える。出産時に無酸素状態に陥ったことで、後遺症を心配してきたが、今はその不安もない。 電車のおもちゃとおしゃべりが大好き。ママの見よう見まねか、最近は自分で食べた後のプレートを流しに持っていくこともあるという。 「ふとした時に、私の頭をヨシヨシしてくれるんです。その時が最大の癒し」とサキさんは笑顔を見せる。 一方で、仕事も順調で、カフェに新商品も誕生した。「養育費捻出のために」とサキさんが半年かけて開発した缶クッキーだ。 まだ売り出したばかりだが、品切れが続くほどの人気商品となっている。サキさんにとってカフェは「もう一人の子供」のような存在。働いている時は、ストレスとは無縁だという。 ある時、サキさんに「結婚は?」と投げかけてみると、少しだけ考えた後、「したくありません」と答えた。 理由を尋ねると、「過剰に気を遣いがちな性格だから、結婚したら夫に気を遣い過ぎてストレスを抱えてしまうかもしれない。そんなストレスを抱えていたら、子供に悪影響が及ぶのではないか」という。 「お金は勿論大事。でも子供との接し方が一番大事だと思っているんです。だから一人でも育てられるようにお店をしっかり盛り立てていく。クッキーもたくさん売って、養育費を稼ぎます」 おっとりとした表情ながら、まっすぐに語るサキさんは「母子2人」だからこそ育まれた絆を強く感じているようだった。そんなサキさんを見て、私たち取材班も、これからの二人の生活に明るい兆しが見えたような気がした。 この記事はフジテレビ「ザ・ノンフィクション」とYahoo!ニュース ドキュメンタリーの共同連携企画です。 #Yahooニュースドキュメンタリー #令和アーカイブス
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