ドイツで急成長の武藤がハリルJに与える化学反応
ブンデスリーガでの初ゴールを含む2発を叩き込み、ドイツに衝撃を与えたハノーヴァー戦から約40時間後。自信と安堵感、そして眠気を手土産に、FW武藤嘉紀(マインツ)はハリルジャパンに合流した。 カンボジア代表とのW杯アジア2次予選(9月3日・埼玉スタジアム)へ向けて、8月31日に埼玉県内で始まった日本代表合宿。ランニングを中心とした約1時間のメニューを終えた武藤は、き然とした表情で海外組となってからの第一声を発した。 「多少なりとも時差ぼけはありますけど、それを言い訳にはしたくない。早く日本の時間に合わせて、いい状態で試合に臨めるようにしたい」 開幕から3試合。マインツのマルティン・シュミット監督からは、ほとんど経験のない1トップを任されている。 初先発を果たしたボルシアMGとの前節では、5度もオフサイドを取られた。それでも積極的な姿勢は萎えるどころか、工夫を加えながらますます果敢になる。 迎えたハノーヴァー戦の前半15分。味方のスルーパスをもらう直前に左へステップして、オフサイドの網をかいくぐった武藤は直後に右へ急旋回。相手GKと1対1になった状況から、左足で冷静にゴール右隅を打ち抜いた。 先制となった初ゴールの14分後には、左CKの折り返しに素早く反応。頭で押し込み、開幕戦を落としたチームを連勝に導くヒーローとなった。 結果を残さなければ居場所がなくなる世界。弱肉強食の掟を理解しているからこそ、武藤は偽らざる思いを口にする。 「肩の荷もだいぶ下りました」 ドイツに渡って約2カ月。第一歩を記すことへの重圧からは解放された。大きな手応えを感じつつも、もちろん満足などしていない。 「日本にいるときよりもオフ・ザ・ボールの動きがよくなったと思うし、戦う姿勢も強く出せるようになったかな。ただ、まだまだこれからです」 FC東京でのポジションは、3トップの左ウイングか2トップの一角。武藤自身はいま現在もこう言ってはばからない。 「本来はサイド(の選手)だと思っているし、最初は多少なりともサイドで出たい気持ちがありました」 決して1トップを拒絶しているわけではない。むしろ自らのプレーの幅と可能性を広げるチャンスとしてポジティブにとらえ、相手の最終ラインの裏へ抜け出すプレーに磨きをかけながら新境地にも挑んでいる。