ドイツで急成長の武藤がハリルJに与える化学反応
合宿初日の練習前。FW本田圭佑(ACミラン)と会話をかわした。 「海外のDFと日本人のDFの違いを少し話しました」 会話のテーマを明かした武藤は、屈強な大男たちと対峙したここまでの経験から、こんな持論を本田にぶつけている。 「日本人は一発で奪いに来ないというか、FWの動きをしっかり見てから来る。逆に海外は一気に前へ取りに来るので、ファーストタッチを上手く動かせばいなせる部分は多い。もちろんボールを取られないことが第一なので、体ごとしっかりと(ボールと相手の間に)入れておかないと足ごと刈られてしまう。体を入れることの重要性をだいぶ理解できたし、逆にボールを奪うときにも、ドイツに行ってからは自分がやられると嫌なことを相手へ仕掛けられるようになってきたのかなと」 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、GK以外の10のポジションに対して原則2人の選手を招集している。 今回ならば1トップは岡崎慎司(レスター)と興梠慎三(浦和レッズ)。武藤の基本ポジションは4‐2‐3‐1の「3」の左となるが、指揮官はこうも語っている。 「武藤は真ん中でもプレーできる。彼のスピードと戦う意識がチームに何かをもたらすと思う。実力も規律もあり、頑張り屋でもあるので、1年後には違う攻撃を見せてくれると信じている」 現状では日本歴代3位となる44ゴールをマークしている実績と濃厚な経験で、今シーズンから挑戦の場をマインツからプレミアリーグへ移した岡崎に軍配が上がる。 ハリルホジッチ監督も「我々にとって重要な選手だ」と29歳の岡崎を高く評価しながら、原則を崩してまで対抗として武藤の名前を加えた。 実は誰よりも岡崎自身が、若きライバルの台頭を望んでいた。 ハリルホジッチ監督の初陣となった3月のチュニジア代表戦。1トップの先発に代表初陣の川又堅碁(名古屋グランパス)が指名された瞬間、岡崎は落胆するどころか武者震いを覚えた。 「競争を望んでいたので。もう一度全員にチャンスが与えられるべきだし、その代わりに自分も試合に出たときには常に厳しく、激しくいきたい」 海を渡ってから6シーズン目。その間に日本で台頭したストライカーを、岡崎はインターネットなどで常にチェックしてきた。ドイツから日本へ熱い視線を送る理由を、岡崎本人から聞いたことがある。 「日本のFWのレベルは上がっているし、みんな特徴がある。その部分で競えるのはすごく楽しい」 ハリルジャパンの第1号ゴールは、川又に代わって途中出場した岡崎が決めた。マインツのエースを引き継いでほしいとバトンを託した武藤が、より高いレベルの速さと強さを追い求めながらライバルに名乗りをあげれば、さらに上回らんと岡崎も燃える。2ゴールを叩き込んでの凱旋帰国とあれば、なおさらだ。