日銀・黒田総裁会見10月28日(全文1)若干の円安は日本経済にプラスの効果
資金繰り支援と金融市場の安定維持に努める
日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。また、引き続き新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、国債買い入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、それぞれ約12兆円および約1800億円の年間増加ペースの上限の下でのETFおよびJ-REITの買い入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めてまいります。その上で、当面、感染症の影響を注視し、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを【***********00:11:12】。
世界的なインフレ動向をどう見ているのか
時事通信:ありがとうございます。それでは幹事社から2問、まず質問させていただきます。インフレの動向についてなんですけれども、先日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議でも、必要に応じた中央銀行の行動ということが確認されたと思います。現時点では一時的との見方が基本線にあるんだとは思いますけれども、原因となっております供給制約の動向も含めまして、世界的なインフレの動向について、22年あるいは23年の物価見通しを含めてどのようにみていらっしゃるかお伺いしたい。 これがまず1点と、それに絡んだような質問ではあるんですが、2問目として、日本国内の物価は欧米諸国などとは乖離した状況となっておりまして、今日の展望レポートでも足元で物価見通し指数下げまして、22年度、23年度は据え置きという形になっていると思います。所得の向上を伴った安定的な物価上昇が実現するか否かというのは、現在行われている選挙戦でもテーマとなっております成長と分配の議論といったこととも関連して注目されているところではあると思います。日本だけがなぜ物価という面で特殊な動きとなっているのか、あらためて総裁のご見解をお伺いできればと思います。この2問です。よろしくお願いいたします。 黒田:まず第1点につきましては、国際商品市況の上昇も含めまして、最近の世界的な物価上昇率の高まりということは、基本的には経済活動の再開に伴う需要の急速な増加に供給が十分に追い付いていないということによって生じているというふうに考えられます。最近の国際会議でもこうした物価上昇は現時点では一時的である、すなわちインフレ予想や賃金などへの2次的波及が回避される下で、供給力の回復とともに、徐々に落ち着いていくという見方が共有されております。 例えばIMFも最新の見通しにおきまして、現在高まっている物価上昇圧力は来年には減衰していくとの見方を示しております。もっとも、この供給制約が予想以上に長期化した場合には、人々の予想物価上昇率の高まりを通じて、インフレ率の高まりが続くリスクがあります。先日もG20ではこうした物価の上振れリスクを念頭に置いて、中央銀行は物価の安定という自らの使命を果たすため、政策スタンスについて明確なコミュニケーションを行いつつ、必要に応じて行動する用意があることを確認したということであります。 なお、わが国について言いますと、消費者物価は海外と比べて落ち着いて推移しておりまして、海外で懸念されているようなインフレ高進のリスクは極めて限定的であるというふうに考えております。