「たくさんの人が通り過ぎていった」 雨の夜、高校生に救われた全盲の猫
障害をものともせずたくましく生きる猫、難病を抱えながらも家族の愛に包まれて暮らす猫、ペットロスの家族を救った猫、認知症の犬を献身的に支えた猫、人間なら128歳の年齢まで生きた猫......奇跡みたいな"ふつうの猫"たちの、感動の実話を集めた書籍『猫は奇跡』(佐竹茉莉子著/辰巳出版)が発売されました。 【写真】保護後、しばらく経ったこはる 本書には大の猫好きとして知られる小山慶一郎さんや、『25歳のみけちゃん』(主婦の友社)の著者で児童文学作家の村上しいこさんから推薦コメントも寄せられています。 本書には、著者の佐竹茉莉子さんが丁寧に取材した、猫と人の物語を17話収録。それぞれの「奇跡」が共感と感動を呼ぶ、猫好き必読の一冊となっています。 本稿では『猫は奇跡』から全3話をご紹介。第1回は、交通事故にあい全盲になるも、家族の愛に包まれ暮らす「こはる」の物語です。 ※本稿は、佐竹茉莉子著『猫は奇跡』(辰巳出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです
光の当たり具合で色が変化する、こはるの目
窓辺で、三毛猫のこはるはのんびりとひなたぼっこを楽しんでいる。週末で、専門学校へ通っている大好きなお兄ちゃんがそばにいて、うれしくてたまらない。お兄ちゃんは、命を救ってくれた人だ。 光の当たり具合で、こはるの目は、暗緑色になったり灰白色になったりする。逆光では、メロンドロップのような不思議な緑色になる。こはるは、2年前の事故で顔面を強打し、視力を一瞬にして失った。 「こはる、おいで」 お兄ちゃんが、猫じゃらしを振って遊びに誘う。こはるは飛んでいく。見えない分、かすかな音にも、気配にも敏感だ。家の中の物の配置もすべて頭の中にある。どの部屋にも自由にこはるは行き来している。ケイコ母さんの部屋は、こはるのためにピンクのじゅうたんが敷きつめられ、ベッドに上がるステップがある。トイレも2つある。お兄ちゃんはといえば、こはるがいつでも出入りできるよう、自室のドアを取り外してしまった。 11月になれば、こはるがここに来てから2年がたつ。当初は寝たきりが続くかと思われたが、今は楽しそうに遊ぶし、要介助でも口からちゃんと食べている。ここまで回復するとは。こはるは、獣医さんまでも驚かせている。