F1波乱の理由と浮上した課題
4か月遅れで開幕した2020年F1の第1戦オーストリアGP、第2戦 シュタイアーマルクGPが終わった。開幕のオーストリアGPは、20台中9台がリタイアするという波乱のレースだった。開幕戦の完走率が低くなる理由は、2つある。ひとつは新車の信頼性がまだ確立していないことによる、マシントラブルが発生してリタイアとなること。もうひとつは、緒戦ということでドライバーのレース勘が完璧な状態ではないことや、逆に結果を出したいという焦りによってアクシデントを誘発させることである。 それでも、この10年間で完走台数が11台以下だったレースは今回も含めて2回しかなく、最近のF1は開幕戦といえども高い信頼性を示してきた。にもかかわらず、今年のオーストリアGPで9台ものマシンがリタイアしたのは、今年ならではの理由があったと考えられる。それは新型コロナウイルス感染症による影響だ。 今年のF1は、変則的な状況の中で開幕した。本来、開幕戦だった3月中旬のオーストラリアGPが新型コロナウイルス感染症の影響でセッション開始直前に急きょ中止となった。その後、新型コロナウイルス感染症が全世界に拡大し、F1はオーストラリアGPだけでなく、第2戦バーレーンGPから第10戦フランスGPまでもが中止または延期に。今回のオーストリアGPは本来11戦目に予定していたグランプリだった。 開幕戦がヨーロッパで開催されるのは、66年のモナコGP以来、54年ぶり。本来の予定より4カ月遅れで開幕するのも、7月にF1がスタートするのもF1史上初のこと。F1が最後にレースを行なったのは昨年の12月1日の最終戦アブダビGPだったので、オーストリアGPは217日ぶりのレースだった。 通常であれば、開幕戦が遅れるということは、開幕までの準備時間がとれるはずなのだが、オーストラリアGPが中止になった後、新型コロナウイルス感染症がヨーロッパで拡大して相次いでロックダウンされたため、F1も8月に予定していたファクトリー閉鎖期間を前倒し、期間も9週間に延長し、チームがファクトリーで仕事を再開したのは5月下旬に入ってからだった。 それに加え、シーズン中のテストが原則禁止というルールも再開に向けた準備不足を招いた。元々これは経費削減のために設けられたルールだったが、それが今回は新型コロナウイルスに苦しむ各チームにとって足かせとなった。そのため、各チームは例外として認められている2年落ち以前のマシンを使用したテスト走行を行った。