なぜF1は7月オーストリアGP開幕の強行スケジュールを組もうとしているのか?
新型コロナウイルス感染症の世界的流行から2カ月が経過し、欧米では徐々にロックダウンを解除し始め、経済活動を再開させる国が増えている。だが、その光景は以前とまったく同じではない。 かつて欧米では感染者が着用するものという概念が根強かったマスクは、いまでは感染拡大予防のために外出時に着用が義務付けられている。新型コロナウイルス感染症が完全に終息するまでにはまだしばらく時間がかかることを覚悟した上で、新型コロナと共存しながら新しい日常をスタートさせ、経済的にも生き延びる道を模索し始めようとしているからだ。 5月上旬には、アメリカのインディカーが、6月6日(土)にテキサス・モータースピード・ウェイで2020年シーズンを無観客で開幕すると発表した。 この動きは、F1界でも同様に起きている。2020年のF1は3月中旬の開幕戦オーストラリアGPから6月下旬の第10戦フランスGPまで中止または延期が続いている。執筆時点で正式な発表はないが、F1は7月上旬に無観客でのオーストリアGPを皮切りにシーズンを始めようとしているのだ。 ヨーロッパでは、7月中旬に開催を予定していたゴルフの海外メジャー「全英オープン」が中止となり、6月から7月にかけて開催される予定だった世界最大の自転車ロードレース「ツール・ド・フランス」もすでに延期が決定している。 そんな中、なぜF1は7月に開幕させるのか。それはレースを行わねば赤字が膨らむ一方だからだ。 F1の収益はレース開催権料、テレビ放映権料、そして広告・スポンサー料の3つから成り立っている。そして、これらの収益の一部が契約に基づいて全チームに分配され、各チームはスタッフに給料を支払っている。つまり、レースを中止してしまうとF1もチームも、ともに収入が絶たれることになる。 F1を所有するリバティ・メディアが5月上旬に発表した2020年第1四半期(1~3月)の決算は、フォーミュラ1グループ(FOG)の本業に関する営業収益は、前年同期の1億9800万ドル(約212億円)から1300万ドル(約14億円)と93%という記録的な減収となった。ちなみに営業利益は1億3700万ドル(約147億円)の赤字となっている。