F1波乱の理由と浮上した課題
これはドライバーやメカニックなどのレース勘を取り戻すにはよい機会となるが、マシン自体は最新ではないため、さまざまな確認作業はオーストリアGPの週末に行うしかなかった。 さらに、この2年落ち以前のマシンでのテストすら、行えなかったチームもある。レッドブルが2年前にパワーユニットを供給されていたのがルノーだが、すでに契約が切れているため、供給を受けることができなかったからだ。また、マクラーレンは2年前のマシンはコンセプトが大きく異なるため、走行をしても意味がないとしてテストを見送り、ドライバーたちはF3などの下位カテゴリーのマシンを利用して肩鳴らしするしかなかった。 そこで、レッドブル・ホンダは、年に2日間だけ許可されているコマーシャル撮影用のフィルミングデーを利用したテストを行なった。このテストは最新のマシンを使用することも可能だが、タイヤはグリップ力の低いデモ走行用タイヤを使用することが義務づけられているだけでなく、走行距離も100km以下に制限されている。そのため、ホンダは最新仕様である「スペック1.1」をこのテストで走らせることはしなかった。 また、ハースなどのように、いずれのテストも行わず、ぶっつけ本番でオーストリアGPに臨むチームもあった。 これらの影響がどれだけあったのかはわからないが、今年の開幕戦がいつもの開幕戦と異なる状況で行われたことは間違いない。 さらに新型コロナウイルスによってシーズン開始が遅れたことによる財政的な影響を受けて、開発コストをさらに削減するためにルールを変更。パワーユニットに関してはオーストリアGPに向けてホモロゲーション(認証)申請した仕様で今シーズンを戦わなければならない。つまり、シーズン中に開発を進めて、パワーユニットをアップグレードすることはできない。 開幕戦で電気系のトラブルが発生したたホンダ以外にも、メルセデスやルノーのパワーユニットにも、トラブルが発生した。今回のルール変更が今後にどんな影響を及ぼすのか。新たな日常とともにスタートした新しいF1は、自らが作った新しいルールとも戦わなければならない日々が続く。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)