琴桜、大関所要6場所での綱取りへ「覚悟を決めてやっていく」 祖父の先代は昭和以降最スロー
大相撲九州場所を14勝1敗で初優勝した大関・琴桜(27)=佐渡ケ嶽=が千秋楽から一夜明けた25日、福岡市内の部屋宿舎で会見した。祖父で先代師匠の元横綱・琴桜が鳥取県出身で、同郷の石破茂首相(67)から祝福のメッセージが届く場面も。数多くの応援を後押しに、初の綱取りへ来年初場所(1月12日初日、東京・両国国技館)で“一発回答”を狙う。 初優勝が決まった際、鬼のような気合たっぷりの形相だった千秋楽から一夜明けた琴桜は、実に穏やかな笑顔だった。「実感が思っていたよりは正直なく、皆さんに『おめでとう』と言われて、本当に優勝したんだ、という感じが少しずつある」と初Vを喜んだ。 八角理事長(元横綱・北勝海)から賜杯を受け取った時はもちろんだが、優勝して印象深かった場面は、表彰式後に支度部屋に戻ってきた時という。「後援会の方々が万歳(の写真撮影)で待っていて、拍手で迎えていただいた時に、(琴)奨菊関が優勝した時を思い出して、自分が迎え入れてもらえる側になれたと思った」と、かみしめた。 数多くのお祝いの中にはサプライズもあった。祖父と同じ鳥取県出身の石破首相からの祝福メッセージだ。石破首相の父親が祖父の後援会長を務めていた縁で、父で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)のもとに届いたもので「琴桜関の栄えある優勝を心よりお喜び申し上げますとともに、今後のますますのご活躍をお祈りいたしております」との内容だった。 その言葉を自ら読み上げた琴桜は「びっくり。ありがたく、うれしく思います」と恐縮。佐渡ケ嶽親方は前夜、首相と電話でも話したそうで、まな弟子の会見を見守った後に「知らない番号だったので、びっくり。電話しながら(思わず)気をつけをしました」と報道陣を笑わせた。 祖父と同じ大関5場所目、27歳で初めて賜杯を抱いた。来場所は初の綱取りで、同じ地位へのチャレンジになる。大関は「なかなか挑戦できる地位ではないし、この世界に入った以上、先代に追いつくことが目標。早く追いつきたい」と言葉に力を込めた。祖父は初V後に苦しみ、昭和以降で最スローとなる“大関通過”32場所で最高位に上り詰めた。孫は多くの祝福を後押しに、最初の絶好機で一気に夢をつかみ取る。(三須 慶太) ◆琴桜に聞く ―表彰式などであまり表情を崩さなかった理由は。 「うれしい気持ちもあるが、勝負の世界で対戦相手もいることなので、感情を抑えていた。人前でなくても喜ぶことはできる」 ―天国の先代に報告は。 「優勝しました、とは報告した。喜んでいるかわからない。厳しい言葉をかけられるかもしれない(笑い)」 ―ターニングポイントになった一番は。 「なかった。ずっと平常心で、同じ感覚で走り抜けられたのが一番良かった」 ―今年はちょんまげ優勝などもあった。大関の心境は。 「もちろん悔しさもあったが、自分がどうするかが、一番大切だと思っていた」 ―単独年間最多勝も獲得。 「年間6場所出続けて、結果を残すことは大変。それを考えた上では良かった」 ―来年初場所は綱取りへ。 「未知数な部分があり、想像がつかない。もうやるしかない。準備をして覚悟を決めてやっていくだけ」 ◆琴桜 将傑(ことざくら・まさかつ)本名・鎌谷将且(かまたに・まさかつ)。1997年11月19日、千葉・松戸市生まれ。27歳。2歳から相撲を始め、埼玉栄中、高を経て佐渡ケ嶽部屋に入門。琴鎌谷として15年九州場所で初土俵。19年名古屋場所で新十両に昇進し、琴ノ若に改名。20年春場所、新入幕。24年春場所で新大関。得意は右四つ、寄り、押し。189センチ、178キロ。
報知新聞社