【台湾の生理事情】アジアで初めて月経カップと吸水ショーツを作ったのは台湾!「ムーンパンツ」開発ストーリー
アプリケーター付きタンポンの誕生で台湾フェムテックが大きく前進
――2010年に発売された台湾初のアプリケーター付きタンポン「KiraKira」を開発したのは、ユアンイーさんとフィオナさんのビジネスパートナーであるヴァネッサさん。「KiraKira」の誕生によって、台湾の生理用品市場はどのように変化したのでしょうか。 ユアンイーさん:ヴァネッサがタンポンのバリエーションの重要性に気づいたきっかけは、アメリカ留学でした。ドラッグストアの壁一面の陳列棚にタンポンだけが並んでいるのを見て、衝撃を受けたそう。アプリケーター付きタンポンの便利さに感動したヴァネッサは、台湾向けにオンライン販売をスタート。半年もすると、ひと月の購入者は200人にも上りました。 フィオナさん:私自身も、当時はアプリケーター付きタンポンを海外で買い集めることがライフワークになっていました。海外を訪れるたびにドラッグストアを巡ってタンポンを買い漁り、自宅にはつねに600本ものストックが。それらは私を安心させてくれる、宝物のような存在でした。 ユアンイーさん:帰国後、ヴァネッサは外国産タンポンの輸入販売を行う代理店を立ち上げました。しかし当時タンポンは医療機器として認定されていたため輸入は容易ではなく、多くの試練が立ちはだかった。そして、本当に良いと思う商品を自分で作ろうと決意したヴァネッサの努力により「KiraKira」が誕生し、アプリケーター付きタンポンをドラッグストアで購入できるようになったんです。それは、私たちタンポン愛用者の生活を変えただけでなく、台湾フェムテックの歴史を大きく前進させた大事件でした。
タンポンユーザーが次に求めたのは台湾製月経カップ
――「KiraKira」の発売から3年後、ヴァネッサさんは月経カップに着目したそうですね。そのキッカケを教えてください。 ユアンイーさん:ヴァネッサはアメリカからタンポンを個人で輸出していたときから、オンラインで生理用品のバラエティや使い勝手、使い方などの情報を詳しく発信していました。タンポンの開発中もオンラインで女性と意見交換を重ねながら信頼関係を築き、「KiraKira」を愛用する女性たちによるファンクラブまで誕生しました。 ファンクラブのイベントを主催した際に、“タンポン愛用者がナプキンを使った時に、どんな不便さを感じるのか”をまとめた感想文を募りました。感想文の謝礼としてイギリス製の月経カップを提示したところ、多くの感想が集まり、インターネットの生理用品コミュニティには「ナプキン→タンポン→月経カップって、女の経験値をあげるスリー・ステップだね」といった書き込みも見られました。多くのタンポンユーザーが、月経カップにチャレンジしてみたいと考えていることが判明したんです。 ■ネットのコミュニティが、生理用品の開発を後押し ――ヴァネッサさんが月経カップの製造を本格的に検討するため、ネットで利用者にインタビューしたいと呼びかけたところ、すでに月経カップを愛用しているたくさんの方が参加を希望したそうですね。台湾では、ネットで生理や性について意見交換をする文化が盛んなのでしょうか。 フィオナさん:とても盛んだと思います。私がオンラインでの“タンポンネットワーキング”をテーマに修士論文を執筆した2000年当時は、BBS(SNSやブログがなかった時代に、ネット上でコミュニケーションをとる手段として利用されていた電子掲示板)をプラットフォームに、身のまわりでは得られない情報を共有していました。 BBSはテーマが掲げられており、それぞれが話したい事柄についての掲示板を探して、自由に書き込みができるシステムで、生理用品や生理の悩みに関するページは、特に盛り上がっていました。当時はまだ生理についてオープンに話せる環境ではなかったので、ネットの掲示板で、タンポンの種類ごとの特徴や使い方など、有識者がこぞってシェアしていました。オタクカルチャーと似ていて、「すごく良いものだから、みんなにも知らせなきゃ!」という意識が働いていたのだと思います。 後に、ヴァネッサが月経カップ「FormoonsaCup」を作るための資金やニーズを募るクラウドファンディングプロジェクトを行った際に大成功を収められたのも、ネットでのコミュニケーションを通じて得た信頼と強い絆があったから。当初の目標額300万元(当時のレートで約950万円)を大幅に上回る、1,000万元(約3,100万円)が集まりました。この結果は、それまでの生理用品市場がいかに不十分であったかを証明しています。