「防衛力を5年以内に抜本強化」自民・岸田総裁会見7月11日(全文1)
年末までに新たな国家安全保障戦略などを策定
まず新型コロナ対応です。足元でオミクロン株の変異種によって全国の新規感染者数は増加に転じています。こうした状況に不安を感じている方もおられると思います。政府、自治体では、こうした状況が起こりうることを想定し、強化してきた医療体制を維持しています。そうした中、病床使用率、重症病床使用率は総じて低水準にあります。病床の確保、ワクチンの接種、検査の拡大、治療薬の確保といった対策を講じ感染を封じ込めてきましたが、今後も同様の取り組みを、点検、強化することで対応していきます。引き続き平時への移行の道を慎重に歩んでいくとの方針の下、感染拡大の防止と経済・社会活動の両立に心を砕きながら対応していきます。 次にロシアによるウクライナ侵略です。世界のどこであっても武力による一方的な現状変更を起こしてはならない。こうした強い思いから今回の選挙期間中もG7やNATOの首脳会合に出席するなど、首脳外交を積極的に進めてきました。ポスト冷戦後の新しい時代が幕を開けようとする中、来年わが国はG7広島サミットを主催します。G7議長国の重責を担い、普遍的価値と国際ルールに基づく新たな時代の秩序づくりをG7が主導していく意思を、歴史の重みをもって示していきます。一部のASEAN諸国やアフリカ諸国など、ロシアとの過去の経緯や経済的つながりを背景に中間的な立場を取っている国々に、日本ならではの働き掛けを全力で行っていきます。日米同盟の抑止力、対処力のいっそうの強化、同志国との連携強化を進めると同時に、いわゆる反撃能力を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討し、年末までに新たな国家安全保障戦略などを策定し、わが国自身の防衛力を5年以内に抜本的に強化していきます。
ウクライナの小麦輸出再開に向け支援行う
第3に世界的な物価高への対応です。G7サミットでは、世界的な規模で起こっているエネルギー、食料をはじめとする世界的な物価高騰の原因はロシアのウクライナ侵略にあるという認識で一致をいたしました。こうした事態に対してもG7は結束し、連携して対応していきます。ロシア産原油を一定の上限価格以下でしか買わないための仕組みづくりや、世界の食糧庫といわれるウクライナの小麦輸出を再開させるためのさまざまな支援を行っていきます。 もちろん国内の皆さんが現に起こっている物価高の中で苦しんでいる、こうした状況に対しては政府が責任を持ってしっかりと対応していきます。1兆円の地方創生臨時交付金を活用した、地方の実情に応じたきめ細やかな支援や、燃料費や電気料金の負担軽減、肉、パン、麺といった食品の価格抑制に向けた取り組みなど、日本の物価上昇のほとんどが占めるエネルギーや食料に集中した政策を、私が本部長を務める、物価・賃金・生活総合対策本部を中心に、緊張感を持って進めます。早速、今週中に本部を開催することとし、5.5兆円の予備費の機動的な活用など、物価、景気の状況に応じた迅速かつ総合的な対応に切れ目なく取り組んでいきます。 第4にエネルギーの安定供給確保です。6月末から観測史上初が続出する猛暑が続き、先月末には東京電力エリアにおいて需給逼迫注意報が出される事態になりました。しかし今、政府からの要請を踏まえ、全国で10以上の火力発電所が次々と運転を再開し始めています。こうした取り組みにより、今週は全国的に10%を超える予備率確保の見通しであるなど、この夏は安定供給に必要となる水準を確保できる見通しです。熱中症も懸念されるこの夏は無理な節電をせず、クーラーを上手に使いながら乗り越えていただきたいと思います。 第5に新しい資本主義の実現です。私は、これからの経済政策で最も大切なことは、持続可能で包摂的な経済をつくり上げていくことだと考えています。そのために重要なことは、まずは賃上げを含む人への投資であり、民間が賃金を引き上げやすい雰囲気をつくっていきます。今年の春闘では過去20年間で2番目に高い水準の賃上げを実現することができました。こうした流れを継続させていくために全力を尽くします。そして持続的な賃上げの原資を生み出すためにも力強い成長を実現していかなければなりません。