大阪・関西万博へ空からアクセス? 国や大阪府が実用化目指す「空飛ぶクルマ」
実現に向けた3つのハードル
空飛ぶクルマ実現に向けて機体開発や制度面の整備が進むなか、「安全性の確保、インフラ整備、市場性の3つが連携しないと、空飛ぶクルマは社会的に受容されないでしょう」と課題を指摘するのは、東京大学未来ビジョン研究センター特任教授の鈴木真二さん(67)。航空工学が専門で、空の移動革命に向けた官民協議会のメンバーも務めています。 安全基準の策定など空飛ぶクルマ実現に必要な制度の整備について、鈴木さんは「(国が実用化を目指す)2023年には間に合いそうですが、基準を満たす機体はいつ市場に登場するのでしょうか」として、国が定めた基準に適合した機体の登場が2023年よりも後になる可能性があるとします。また、インフラ整備は、離発着場や管制設備など、運行に必要な設備の整備を誰が担うのかが今後の論点になると予想します。 市場性については「道路渋滞を避けて上空を移動したい、というニーズは大きいと見込まれますが、安全面での規制が厳しくなると予想されますし、都市上空を飛ぶようなビジネスをすぐに実現するのは難しいでしょう。それより先に、山間部や離島といった人の少ない場所での交通支援など、自治体のサービスから入るべきではないでしょうか」と指摘します。 大阪府の構想に対しても「客を乗せての輸送には厳しい条件が課せられるでしょう。デモ飛行を行うのは可能だと思いますが、2023年に事業化し、2025年の大阪・関西万博で大勢の人を運ぶビジネスを展開する、というのは無理があるかもしれません」と語る鈴木さん。 ただ、大阪府および近隣府県での事業展開自体については、「たとえば、関西国際空港、神戸空港、万博会場の夢洲は海に面しています。もし海や川の上を飛行ルートとして活用できれば、移動ニーズはそこそこあると感じます」として、海や川に面した場所を結ぶ移動サービスなら、比較的早期に実現できる可能性があると見ています。 国や大阪府が描く青写真通りにことが運ぶかどうかは、実用化に向けた取り組みの進捗次第と言えます。2023年、大阪府で空飛ぶクルマビジネスが「離陸」する姿を目にすることができるでしょうか。 (取材・文:具志堅浩二)