設備の老朽化、コロナ禍のダメージ、人口減少――逆境の地方鉄道が模索する「稼ぎ方」
いすみ鉄道の古竹社長は、電車が交通インフラの頂点に位置づけられる時代は変わりつつあるとも感じている。 「今までは地域にとって鉄道とはどんな存在か、という前提があったかもしれませんが、実は逆。鉄道にとって地域とは、という時代に突入しています。より一層、地域への還元をどう考えるか、ということが重要になってくるでしょう」
キハ28という柱は失ったが、いすみ鉄道では地域社会の中で生きることを新たなアプローチから実践しはじめている。それは学生やクリエーターたちに“実験の場”として鉄道を提供することだ。 「地元の大多喜高校の生徒と話している際、『鉄道というキャンパスが出来たら面白い』という言葉が、すごく刺さったんです。鉄道という舞台を学生やクリエーターに提供し、新しい価値を生み出す場にしようと考えたのはその時から。JRさんや大手私鉄にはできないけど、三セク鉄道ならできるんじゃないか、と。全国の大学生やクリエーターと打ち合わせも始め、既に東京工業大学や法政大学、日本大学が、香りの研究やBluetoothを用いた人の動きの研究などを実施しているんです。クリエーターなら、鉄道会社を作品発表の場にできたら面白そうです。短期的な利益は見込めないかもしれませんが、そうした実験が莫大な利益を生み出し、地域にも大きな恩恵をもたらすことができるかもしれない。こんなとっぴな発想で三セク鉄道を考えるのも面白いと思うんです」